マドラスの戦い

マドラスの戦い

1746年9月、第一次カーナティック戦争の最中、フランス軍がイギリス軍を攻撃し、マドラスを占拠しました。その後、この都市は終戦までフランスの手にありましたが、アーヘンの和約により、イギリスに返還された経緯があります。特に注目されるのは、戦闘中に捕虜となったロバート・クライヴが脱出し、マドラス陥落の警告をセント・ジョージ要塞に届けたことです。

背景

植民地時代の1720年代以降、イギリスとフランスのインドにおける競争は激化し、両国はオーストリア継承戦争でも敵対しました。その結果、イギリスはカーティス・バーネット海軍代将の指揮の下、フランス商人を攻撃する艦隊をインドに派遣し、それに対してフランスも同様の艦隊を送りました。しかし、互いに成果を上げることはできず、両国は一時的にセイロンおよびポンディシェリーに撤退しました。

イギリス指揮官エドワード・ペイトンは大規模な海戦を避け、コロマンデル海岸を離れてベンガルへ退いたため、その地域のイギリス人は危険な状況に置かれました。その隙を突いて、フランスのポンディシェリー総督、ジョゼフ・フランソワ・デュプレクスはマドラスへの攻撃を決定し、地元の勢力を味方に引き入れるため、「マドラスを占領した後はカルナータカ太守に引き渡す」と約束しました。

戦闘の進展

1746年9月7日、マドラスの住民が目を覚ますと、すでにフランス艦隊による脅威が迫っていました。フランス軍はマドラスへの砲撃を開始しましたが、初期の攻撃はあまり効果的ではありませんでした。しかし次第にフランスの攻撃が厳しさを増し、イギリスの駐留部隊は数日間の防御の中で多くの損害を被りました。さらには、部隊の士気も低下し、兵士たちは酒に溺れて任務を放棄する始末でした。

このような混乱の中で、9月9日にはイギリスの総督ニコラス・モースが降伏を求めました。ラ・ブルドンネが提示した条件は意外にも寛大であり、要塞と倉庫の接収を認めたものの、そのほかのすべての権利はイギリスが保持することにされました。しかし、デュプレクスはこれを拒否し、すぐにマドラスを完全に占領する方針を取りました。

クライヴの脱出

占領の混乱の中、ロバート・クライヴは投獄されましたが、彼は数名の仲間と共にインド人に扮して脱出を試みました。不安な状況の中で、彼らは巧妙に監視の目を逃れ、セント・ジョージ要塞へと急いで戻りました。この脱出劇によって、クライヴは名声を得ることとなりました。

戦闘後の情勢

フランスはマドラスをその後も保持し続けました。しかし、ブルドンネがカルナータカ太守への約束を果たさなかったため、太守は自らの軍勢を派遣して条件を履行させようと試みましたが、少数のフランス兵に阻まれて失敗しました。その後フランスはセント・デイヴィッド要塞を攻撃しましたが、こちらでも撤退を余儀なくされました。

最終的には、1748年のアーヘンの和約により、マドラスはイギリスに返還されました。フランスは1759年に再度マドラスを攻撃しましたが、成果は得られませんでした。この戦いは、植民地時代の競争関係を象徴する重要な出来事とされています。

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