ママイ (キヤト部)

ママイの生涯と影響

ママイ（Mamai、？ - 1380年）は、ジョチ・ウルスにおいて重要な軍人かつ政治家として名を馳せました。彼はキヤト部族の出身で、現在のウクライナ南部やクリミア半島を含む広大な地域を支配していました。彼の存在は、特にウズベク・ハンの即位において大きな影響を持ち、またベルディ・ベク・ハンの義理の息子とも伝えられています。

ハンの擁立者としての活動

1350年代末、ママイはクリミア・ハン国になる地域を領有していました。その頃、ベルディ・ベク・ハンの在位中には、国家の軍事、外交、裁判を統括する万人隊長（ベイレルベイ）に就任しました。1359年にベルディ・ベクが暗殺された後、彼はその暗殺に関与していたクルナと敵対する派閥に加わります。ジョチ・ウルスはベルディ・ベクの死後、混乱に見舞われ、多くの王族がハーンの位を巡って争いました。この混乱の中、ママイはチンギス・カンの血を直接引いていなかったにも関わらず、ハンの擁立に強い影響を持ち、ウズベク・ハンの末裔であるアブドゥッラーをはじめ、複数の王族をハンに擁立しました。

彼が支配する地域は多数の部族から成り立っており、ルーシ諸侯の間でも彼の権威は認められました。1371年にはモスクワ公ドミートリーがウラジーミル大公位を得るため、ママイに敬意を表しに訪れるほどでした。

クリコヴォの戦いとその影響

しかし、ママイの支配は彼自身の敵との戦いによって阻まれます。ベルディ・ベクの死後、ジョチ・ウルスは内乱に陥り、ルーシ諸侯への介入能力を失っていきました。1373年頃、モスクワにおける貢納が停止されると、彼はリトアニア大公ヨガイラ、リャザン公オレーグと結束し、モスクワへの圧力を加えました。

その後、1377年にはモスクワがヴォルガ・ブルガールを攻撃、続く1378年にはヴォジャ河畔の戦いでママイが派遣した将軍ベギチの軍が破れてしまいます。そして、1380年9月8日のクリコヴォの戦いにおいて、彼はモスクワ公ドミートリー率いる連合軍に敗北し、以後、彼の権力は揺らぎます。

敗戦後、莫大な戦争準備への出費のために追撃することができず、再戦に向け兵力を集めるものの、内部の敵トクタミシュに打ち破られ、最終的にクリミアに退却しました。彼はその後、ジェノヴァのカッファに逃れましたが、彼の財産を狙った者たちによって命を落とすことになりました。彼の死後は、彼に従属していた遊牧民はトクタミシュに帰順し、ジョチ・ウルスの再統一の道が開かれることとなります。

子孫と影響

興味深いことに、イヴァン4世の母エレナ・グリンスカヤの家系であるグリンスキー家は、ママイの子孫を自称しています。この血筋が事実であれば、イヴァン4世はクリコヴォの戦いの勝者と敗者両方の血を引くことになります。

このように、ママイの生涯は単なる軍人や政治家に留まらず、ジョチ・ウルスやルーシにおける権力闘争、そして歴史的事件に多大なる影響を与えた人物であり、その存在は歴史の中で重要な位置を占めています。

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