マラウイの政治

マラウイの政治は、間接民主制による共和政治を基盤とし、大統領制を採用しています。大統領は元首、政府の長、そして与党の代表という重要な役割を担い、行政権は内閣が、立法権は内閣と国民議会が共有し、司法権はこれらの行政・立法から独立しています。1994年に多党制民主主義が導入されて以来、マラウイの政界は複数政党による競争が行われています。

歴史的背景

19世紀末からイギリスの保護領であったマラウイ（当時はニヤサランド保護領）では、白人入植者が強い権限を持ち、先住民の権利は大きく制限されていました。第二次世界大戦後、アフリカ諸国で独立の機運が高まる中、1957年にガーナがサハラ以南のアフリカで最初の独立国となり、1960年には「アフリカの年」と呼ばれるほど多くの国が独立を果たしました。

ローデシア・ニヤサランド連邦内でも、1950年代後半には黒人による反乱が発生し、イギリスによる連邦維持は困難な状況となっていました。

独立と一党制時代

1961年の選挙でマラウイ会議党が圧勝したことが、マラウイ独立への大きな転換点となりました。53議席中50議席を獲得したマラウイ会議党は、1962年に自治権を獲得し、1963年には党首のヘイスティングズ・カムズ・バンダが首相に就任。1964年には英連邦王国の一員として独立を達成し、1966年にはマラウイ共和国が成立、バンダが大統領に就任しました。

しかし、1964年の選挙はマラウイ会議党のみが候補者であったため、投票は実際には行われず、その後バンダは1966年に憲法でマラウイ会議党以外の政党を非合法化し、一党制体制を確立しました。1970年には、国会でバンダを終身大統領とすることが議決され、選挙の候補者はバンダ自身が決定し、信任投票または無投票で当選するという状況が続きました。1983年以降は、事実上党のナンバー2である幹事長の地位を空席とし、さらなる権力集中を図りました。

多党制への移行

1991年、南アフリカ共和国のフレデリック・ウィレム・デクラーク大統領がアパルトヘイトを法的に廃止したことを受け、バンダの独裁政治に対する国内外からの批判が高まりました。1993年、バンダは一党制維持か多党制導入かを国民投票で問うことを決定し、その結果、有権者の約3分の2が多党制導入に賛成したため、1994年から多党制が導入されることになりました。1994年に行われたマラウイ初の多党制選挙では、統一民主戦線のバキリ・ムルジが勝利し、30年以上にわたるバンダの独裁政治は終焉を迎えました。

ムルジは1999年の選挙でも再選され、2期目を務めましたが、2002年には憲法の大統領3選禁止規定を改正しようとした試みが国民の反発により失敗に終わりました。2004年の選挙では、ムルジの後継者であったビング・ワ・ムタリカが当選しましたが、ムタリカはムルジおよび統一民主戦線と対立し、民主進歩党を立ち上げ、少数与党として政策運営に苦慮することとなりました。しかし、2009年の選挙ではムタリカが圧勝し、民主進歩党も単独過半数を獲得し、安定政権を築きました。

アメリカのNGOであるフリーダム・ハウスが発表する「世界の自由度2009」において、マラウイは政治的自由と市民的自由の双方で比較的高い評価を得ています。

大統領と副大統領

1995年の憲法により、国家元首であり政府の長である大統領は、5年ごとの直接選挙で選出され、3選は禁止されています。副大統領は大統領とともに選挙で選ばれます。大統領は、自身が所属する政党以外の人物から第二副大統領を任命する権限を持っています。内閣のメンバーは、国会議員であるか否かを問わず任命可能です。

国民議会

マラウイの国民議会は194議席で構成され、5年ごとの小選挙区制選挙で選出されます。憲法には元老院（80議席）を設置する規定もありますが、現在まで設置された例はありません。元老院は、伝統的指導者、各地域の代表者、女性、若者、障害者などの多様なグループから代表を選出することを目的としています。

政党と選挙

2009年5月19日に行われた直近の選挙では、民主進歩党のビング・ワ・ムタリカが65.98%の得票を得て圧勝し、大統領2期目を務めることとなりました。民主進歩党も194議席中114議席を獲得し、単独過半数を達成しました。

司法機関

マラウイの憲法は、行政、立法、司法の三権分立を明確に規定しています。司法制度は、旧宗主国であるイギリスの制度を参考に、下級裁判所、高等裁判所、最高裁判所の3審制を採用しています。アムネスティ・インターナショナルによると、マラウイは死刑制度を維持していますが、執行は停止されています。

地方行政

2009年現在、マラウイは北部州、中部州、南部州の3つの州に分かれ、その中に計28の県が置かれています。これらの州の地方行政官や県知事は、中央政府によって任命されます。2000年11月21日に行われた初の多党制地方選挙では、統一民主戦線が選挙区の70%の議席を獲得しました。

政治運営に関与している国際組織

マラウイは、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国（ACP）、アフリカ開発銀行（AfDB）、イギリス連邦（Commonwealth of Nations）、国際連合（UN）など、多数の国際組織に加盟し、国際社会との連携を深めています。

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