マラス (ギャング)

マラス：中南米を脅かすギャング組織

マラス（Maras）は、アメリカ合衆国を発祥とし、メキシコ、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラなど中南米に広がっている大規模なギャング組織です。その活動は多岐にわたり、地域社会に深刻な影響を与えています。

マラスの語源

マラスの語源については、複数の説があります。エルサルバドルで「騒ぎを起こす連中」を意味する「マラ」に由来するという説もありますが、最も有力なのはスペイン語の「マラブンタ（marabunta）」に由来するという説です。「マラブンタ」とは、「群衆」や「群れ」を意味し、「通りにあるものをすべて食い尽くす蟻の集団」を指す言葉としても使われます。この語源は、マラスの組織としての勢力と、その活動の破壊的な側面を象徴していると言えるでしょう。

現在、マスメディアが「マラス」と呼んでいるのは、自らを「マラ」と称するギャング団だけでなく、「パンディージャス（pandillas）」と呼ばれるギャング団全体も含まれており、本来の「マラス」の意味から離れて、凶悪犯罪に手を染める若者ギャング全体を指すようになっています。

マラスの活動

マラスの活動は、武器密売、暴行、自動車盗難、住居侵入盗、麻薬密売、恐喝、人身売買、個人情報詐取、個人情報盗難、違法賭博、不法入国、誘拐、マネーロンダリング、密輸、売春、ゆすり・たかり、強盗、破壊行為など、多岐にわたります。その活動は非常に組織的で、地域社会に大きな脅威を与えています。

また、マラスのメンバーは、ほぼ全員が入れ墨をしています。特に、「La vida por las maras（ギャングのための人生）」というマラスが好んで使う言葉がよく彫られています。これらの入れ墨は、組織への忠誠と帰属意識を示すものとして機能しています。

マラスの歴史

マラスの歴史は、1958年にロサンゼルスで結成されたチカーノ系ギャング「クラントン・14」の支部である「クラントン・18」に遡ります。「クラントン・14」がチカーノ以外の加入を認めなかったのに対し、「クラントン・18」は1965年に独立し、新米メキシコ人やエルサルバドル、ホンジュラスなどからの移民も受け入れ、勢力を拡大しました。これが、後に二大マラスの一つとなる「ディエシオチョ（Dieciocho）」、通称「エイティーンス・ストリート・ギャング（18th Street Gang）」となります。

18の誕生から数年後の1970年代には、ピコ・ユニオン地区に移住してきたエルサルバドル系の若者たちが「マラ・サルバトルチャ・ストーナーズ（Mara Salvatrucha Stoners）」というギャングを組織します。彼らは当初、ヘヴィーメタルを好む不良少年たちでしたが、ロサンゼルスのヒスパニック社会において新参者であったことから、他のギャングからの攻撃を受けるようになり、自衛のために本格的なギャングへと変化していきました。

1980年代には、エルサルバドル内戦から逃れてきた若者たちが合流し、勢力を拡大しました。他のギャングとの抗争を経て、南カリフォルニアのヒスパニック・ギャングの連合体「スレーニョス（Sureños）」に加入し、二大マラスの一つである現在の「マラ・サルバトルチャ（Mara Salvatrucha）」、通称「MS-13」へと発展しました。「13」を組織名に冠することは、「スレーニョス」に所属する組織の証であり、「スレーニョス」を総括するプリズン・ギャング「メキシカン・マフィア（Mexican Mafia）」への忠誠を意味します。

かつては友好的な関係にあったとされる18とMSですが、現在では対立関係にあります。

1990年代には、ウィルソン知事が犯罪歴のあるホンジュラスの若者たちを強制的に母国に送り返す政策を始めました。これにより、カリフォルニアで始まったギャングの文化が母国に流入し、強制送還者によって持ち込まれたロサンゼルスのギャングスタイルが、特に年少者の間で洗練されたかっこいいものとして受け入れられ、そこから母国のマラスへと広がっていきました。

1990年代からは、中南米一帯にその存在感を高めており、現在ではエルサルバドルに1万人、ホンジュラスに4万人ものギャングメンバーが存在すると言われています。

マラスは、その凶悪な活動と組織的な拡大により、中南米地域に深刻な影響を与え続けています。社会問題の一つとして、その解決には、多方面からの取り組みが求められています。

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