マラ・サルバトルチャ

マラ・サルバトルチャ（MS-13）とは

マラ・サルバトルチャ（Mara Salvatrucha）、通称MS-13は、中央アメリカおよびアメリカ合衆国に拠点を置く大規模なギャング組織です。この組織は、麻薬密輸、武器の不法販売、不法入国、殺人請負、窃盗など、多岐にわたる犯罪活動に関与しています。MS-13は、その暴力性と組織力から、非常に危険なギャングとして認識されています。

結成の背景

MS-13は、1970年代後半から1980年代頃、カリフォルニア州ロサンゼルスのピコ・ユニオン地区で、エルサルバドル内戦から逃れてきた難民の子どもたちによって結成されました。当初は、ヘヴィメタルを好み、ストーナー文化に傾倒する若者たちの集団でした。結成当初の目的は、ロサンゼルスに既に存在していた他の人種グループのギャングからエルサルバドル移民を保護することでした。

1990年代には、エルサルバドルやグアテマラなどからの亡命者が増加し、MS-13の構成員も急増しました。組織には、失業した元兵士や元少年兵が多く含まれていました。1992年のエルサルバドル内戦終結後、多くのメンバーが逮捕され、アメリカからエルサルバドル本国に強制送還されました。この強制送還が、MS-13が中央アメリカ諸国へと拡大するきっかけとなりました。

組織の拡大と活動

MS-13は、エルサルバドルを中心に、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ベリーズ、パナマといった中央アメリカ諸国に広がっています。また、スペインなどでも活動が確認されており、その影響力は拡大し続けています。組織内部には、複数の排他的なグループや派閥が存在し、2017年時点では、アメリカ大陸全体で約3万人の構成員がいるとされています。

内戦後の不安定な政治状況や経済の悪化、貧富の差による貧困や失業などが、若者がMS-13に加入する要因となっています。組織は、麻薬密輸や武器の不法販売、不法入国、殺人請負、窃盗などの犯罪に関与しています。また、当局に対して好戦的な姿勢をとり、その活動は非常に危険視されています。

組織の特徴

MS-13のメンバーは、独特な手のサインを使用します。人差し指と小指を立てて逆さまに表示する「デビルズ・ヘッド」と呼ばれるサインは、MS-13の象徴的なジェスチャーです。このサインは、結成当初、創設者がヘヴィメタルコンサートに参加した際に、ヘヴィメタルバンドやファンがこのジェスチャーを行っていたことに由来すると言われています。

「マラ・サルバトルチャ」という名前の語源には諸説あり、議論が続いています。一説には、エルサルバドルの首都サンサルバドルの通りの名前「ラ・マラ」と、エルサルバドル内戦のゲリラ組織「ファラブンド・マルティ民族解放戦線」の農民ゲリラ訓練に由来するとされています。また、「マラ」はカリシェ・スラングでギャングを意味し、スペイン語のグンタイアリを意味する「マラブンタ」に由来するという説もあります。さらに、エルサルバドル（Salvadoran）と、カリシェ方言で警戒を意味するトルチャ（trucha）を組み合わせたものとする説もあります。

組織名の末尾にある「13」は、カリフォルニア南部のラテン系ギャング連合体スレーニョスを統括するプリズンギャング、メキシカン・マフィアへの忠誠を示すものです。MS-13は、他のヒスパニック系ギャングとの抗争を経て、メキシカン・マフィアから服従か死かの選択を迫られ、1993年にスレーニョスに加入しました。

MS-13への加入希望者は、13秒間メンバーから袋叩きにされるという儀式を経て、正式なメンバーとなります。

近年の動向

MS-13は、エルサルバドル国内でも他のギャング組織との抗争を繰り広げています。2019年には、刑務所内で収容されていたMS-13の構成員5人が、別の収容者から襲撃を受けて殺害される事件が発生しました。

また、同じくピコ・ユニオン地区で結成されたエイティーンス・ストリート・ギャングとは、結成当初は友好的な関係にありましたが、現在では恒久的な対立関係にあります。

2022年、エルサルバドル政府はギャング対策に乗り出し、1年間でMS-13のメンバーを含む約65,000人を拘束しました。拘束されたメンバーの多くは、米州最大の刑務所「テロリスト監禁センター（CECOT）」に収容されています。

参考資料

MS-13 Current News and Analysis - ウェイバックマシン
"18 with a Bullet" Wide Angle PBS
"How the Street Gangs Took Central America" - ウェイバックマシン
"For Salvadoran gangs, jail is a revolving door"
"Gangs, Terrorists, and Trade" - ウェイバックマシン
"World's Most Dangerous Gang", ナショナルジオグラフィック制作ドキュメンタリー
Spotlight on MS-13 gang, ニューヨーク・タイムズ

関連項目

ギャング
* エルサルバドル内戦

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