マリア (小ヤコブとヨセの母)

新約聖書に登場するマリアは、イエスの磔刑と埋葬に関わる重要な女性の一人として描かれています。彼女は『マルコによる福音書』、『マタイによる福音書』にその名が記されており、イエスの磔刑の場にマグダラのマリアら他の女性たちと共に立ち会い、その死を見届けました。また、安息日が明けた早朝には、イエスの墓を訪ねた女性たちの一人としても知られています。

福音書の中では、このマリアは複数の名前で呼ばれています。例えば、「ヤコブとヨセフの母」、「小ヤコブとヨセの母」、「ヤコブの母」などです。これらの呼び方は、福音書の記述箇所によって異なりますが、文脈から判断すると同一人物であると考えられています。新共同訳聖書においても、これらの異なる呼び名が用いられていますが、いずれも同一人物を指していると解釈されています。ただし、『ヨハネによる福音書』には、これらの呼び方でマリアが登場することはありません。

このマリアの息子である「小ヤコブ」や「ヨセ」については、詳しいことはわかっていません。聖書には彼らに関する記述が少なく、彼らがどのような人物であったのかは明確ではありません。特に「小ヤコブ」については、アルファイの子ヤコブと同一人物なのかどうかという議論もあります。『レクラム版　聖書人名小事典』では、アルファイの子ヤコブと小ヤコブは別人であろうと推測しています。このように、聖書に登場する人物の中には、その出自や詳細が不明な人物も存在します。

このマリアは、イエスの磔刑という悲劇的な出来事を目の当たりにし、その死後も墓に訪れるという、イエスに対する強い信仰と献身を示した女性として描かれています。彼女の行動は、イエスの教えを信じ、その死を悼む初期キリスト教徒の姿を象徴していると言えるでしょう。彼女の物語は、新約聖書における女性の役割と重要性を示唆するものであり、今日においても多くの人々に感銘を与えています。

関連する聖書箇所としては、『マルコによる福音書』15章40節、47節、『マタイによる福音書』27章56節、61節、28章1節などが挙げられます。これらの箇所を読み解くことで、このマリアがどのような存在であったのか、その役割や行動について深く理解することができます。

参考文献

新共同訳新約聖書 日本聖書協会
口語訳新約聖書 日本聖書協会
ハンス・シュモルト 著、高島市子 訳　『レクラム版　聖書人名小事典』　創元社、2014年9月20日初版。

関連項目

聖書の登場人物の一覧
マリア (曖昧さ回避)
マリア (クロパの妻)
* ゼベダイの子

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