マリアの宣教者フランシスコ修道会

マリアの宣教者フランシスコ修道会（Franciscan Missionaries of Mary、略称：F.M.M.）は、ローマに総本部を置くカトリック教会の国際的な女子修道会です。この修道会は、1877年にマリー・ド・ラ・パシオン（Marie de la Passion）によって、「マリアの宣教会」として設立されました。その設立は、同年、当時の教皇ピオ9世によって正式に承認されています。その後、フランシスコ会の精神を取り入れ、1885年には現在の名称であるマリアの宣教者フランシスコ修道会として新たな歩みを始めました。

創立の背景

創立者マリー・ド・ラ・パシオンは、もともと別の修道会である「マリー・レパラトリス会」のメンバーとして、1865年に宣教のためインドへ派遣されていました。インドで修道女としての誓願を立て、やがて管区長という重要な役職に就きます。しかし、様々な困難や誤解が生じた結果、彼女はこの修道会を離れることとなりました。1876年、マリーは自身に賛同する18名の仲間と共にインドを離れ、ローマへ向かいます。そこで彼女たちは新たな共同体として「マリアの宣教会」を設立し、教皇ピオ9世の承認を得て、その働きを開始したのです。この共同体が、現在のマリアの宣教者フランシスコ修道会の母体となりました。1882年には、この宣教会がフランシスコ会の精神を受け入れ、1885年に現在の正式名称に変更されるに至ります。

世界と日本での活動

マリアの宣教者フランシスコ修道会は、創立以来、世界各地で宣教活動を展開しています。単に信仰を伝えるだけでなく、地域社会の具体的な必要に応じた奉仕活動に重点を置いており、特に医療、福祉、教育の分野で顕著な働きをしています。

日本においては、明治時代にその活動が始まりました。特筆すべきは、1898年（明治31年）に熊本県で私設のハンセン病療養所「待労院」および、それに併設された「慈恵診療所」の設立に修道女たちが深く関わったことです。当時、社会的に厳しい状況に置かれていたハンセン病患者や病気で苦しむ人々への献身的なケアは、修道会の慈善活動の象徴とも言えます。「慈恵診療所」は後に「慈恵病院」へと発展し、「こうのとりのゆりかご」（赤ちゃんポスト）の設置などでも知られています。

これらの医療・福祉事業は、現在、社会福祉法人聖母会に引き継がれており、東京都新宿区の聖母病院や神奈川県横浜市の高齢者施設「聖母の園」などを運営しています。

教育分野では、学校法人天使学園を経営し、天使大学（北海道札幌市）において看護学や栄養学を教え、専門人材の育成を行っています。また、かつては学校法人聖母学園の下で聖母大学を運営していましたが、2011年に聖母学園が学校法人上智学院に吸収合併されたことで、聖母大学の経営は上智学院に移管されました。聖母大学は2014年に廃止されましたが、そのキャンパスや設備は上智大学の看護系の学部・大学院へと引き継がれています。

列福・列聖された人々

マリアの宣教者フランシスコ修道会からは、信仰のために特別な証しを立てた人々が列福・列聖されています。

1900年に清国（現在の中国）で起きた義和団事件では、修道女7名が信仰のために命を捧げ、殉教しました。彼女たちは、同じ事件で殉教した多数の中国人カトリック信徒と共に「中国百二十聖人」として列聖され、カトリック教会全体で聖人として崇敬されています。
創立者のマリー・ド・ラ・パシオンは、その生涯における働きと徳が認められ、2002年に列福されました。
* インドを経て清国に派遣された修道女マリア・アスンタは、派遣後まもない1905年に病で亡くなりましたが、その死の直前から超自然的な現象が報告され、聖性が認められて1954年に列福されています。

マリアの宣教者フランシスコ修道会は、これらの聖人たちに代表される献身の精神を受け継ぎ、現在も世界各地で宣教と奉仕の働きを続けています。

もう一度検索