マリウポリの戦い (2022年)

マリウポリの戦い

マリウポリの戦いは、2022年2月24日から5月20日まで、ロシア軍とウクライナ軍の間で、ウクライナ南東部の要衝マリウポリ市を巡って繰り広げられた激戦です。ロシア軍はドネツク人民共和国の民兵と連携し、約3ヶ月に及ぶ包囲戦の末、マリウポリを制圧しました。

戦闘の経過

包囲戦の開始

ロシア軍は侵攻開始と同時にマリウポリへの砲撃を開始し、2月25日には地上部隊が侵攻を開始しました。ウクライナ軍は当初、ロシア軍の進撃を阻止しましたが、2月28日には市街地が包囲され、3月2日には完全に包囲されました。包囲後、ロシア軍は大規模な砲撃を加え、民間人の犠牲者が多数発生しました。また、都市のライフラインは寸断され、人道危機が深刻化しました。

人道回廊の試み

3月5日には、民間人の避難を目的とした人道回廊が設けられましたが、ロシア軍は停戦を遵守せず、砲撃を続けたため、避難は困難を極めました。赤十字国際委員会は、マリウポリの状況を「極めて悲惨」と表現しました。

市街戦

3月12日、ロシア軍はマリウポリ東郊外を占領し、市街戦が開始されました。ウクライナ軍は、食料や水が枯渇する中でも抵抗を続けましたが、3月18日には空港を占領され、3月19日にはアゾフスタリ製鉄所での戦闘が始まりました。

アゾフスタリ製鉄所での抵抗

マリウポリの最後の抵抗拠点となったアゾフスタリ製鉄所では、アゾフ連隊を中心としたウクライナ軍が頑強に抵抗を続けました。ロシア軍は製鉄所への攻撃を繰り返しましたが、その巨大な構造と地下トンネル網により、完全な制圧は困難を極めました。4月21日、ロシアのプーチン大統領はアゾフスタリ製鉄所を襲撃せず、包囲して制圧するよう命じました。

民間人の避難

4月30日、国連と赤十字国際委員会の仲介により、アゾフスタリ製鉄所からの民間人の避難が開始されました。数日にわたる避難活動で、女性や子供、高齢者などの民間人が避難しましたが、製鉄所に残った兵士たちの状況は悪化の一途を辿りました。

ウクライナ軍の降伏

5月16日、ウクライナ軍はアゾフスタリ製鉄所での戦闘任務を完了し、降伏を開始しました。5月20日には、アゾフ連隊の司令官を含む最後の兵士たちが降伏し、マリウポリの戦いは終結しました。

戦闘の背景

マリウポリの戦略的重要性

マリウポリは、ウクライナのドネツク州に位置する重要な港湾都市であり、アゾフ海沿岸最大の都市です。また、ウクライナ最大のロシア語圏都市の一つでもありました。マリウポリの掌握は、ロシアにとってクリミア半島への陸路を確保し、アゾフ海の支配を確立するために不可欠でした。

過去の戦闘

2014年、マリウポリは親ロシア派勢力に占拠されましたが、後にウクライナ軍が奪還しました。その後も、2015年のロケット弾攻撃や、2018年のケルチ海峡事件など、緊張が高まることがありました。2014年以降、マリウポリの防衛で重要な役割を果たしたのが、アゾフ大隊でした。

戦闘の影響

人的被害

マリウポリの戦いでは、多数の民間人が犠牲になりました。ウクライナ当局は、民間人約2万5000人が死亡したと報告していますが、国際連合は、少なくとも1,348人の民間人の死亡を確認しています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、集団墓地の分析に基づき、2022年3月から2023年2月までに少なくとも1万284人が死亡したと推定しています。

都市の破壊

ロシア軍の激しい砲撃により、マリウポリは壊滅的な被害を受けました。市の少なくとも95％が破壊され、住宅やインフラが甚大な損害を被りました。国連は、市の住宅建物の90％が被害を受けたか、完全に破壊されたと報告しています。

アゾフ連隊の損失

マリウポリの戦いで、アゾフ連隊は多くの兵士を失いました。降伏後、アゾフ連隊の兵士たちは捕虜となり、その後、捕虜交換によって一部の兵士がウクライナに戻りましたが、戦闘任務を続けられる隊員はほとんどいませんでした。

ロシアの占領政策

マリウポリは、ロシア軍の占領下に置かれました。ロシアは、破壊されたインフラの復旧や、市民への人道支援を行っていますが、一方で、住民への強制的なロシア国歌の斉唱や、ロシアへの強制移住などの問題も指摘されています。

まとめ

マリウポリの戦いは、ロシアによるウクライナ侵攻の中でも最も激しい戦闘の一つであり、多数の民間人の犠牲者と街の壊滅的な破壊をもたらしました。この戦いは、ロシアとウクライナの間の紛争の深刻さを象徴する出来事として、歴史に刻まれるでしょう。

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