マリク・シャー2世

マリク・シャー2世（ペルシア語：أبو الفتح ملكشاه Abū al-Fatḥ Malik Shāh、أبو الفتح ملكشاه بن بركيارق بن ملكشاه Abū al-Fatḥ Malik Shāh b. Barkiyāruq b. Malik Shāh b. Alp Arslān）は、1105年に死去した、セルジューク朝の第6代スルターンです。彼の生年は詳らかではありません。その短い生涯の中で、彼がスルターンの地位にあったのは、1104年12月から1105年にかけてのごく短い期間でした。

彼の父は、第5代スルターンであったバルキヤールクです。バルキヤールクは、その治世中に自身の兄弟たち、特に弟であるムハンマド・タパルとの間で激しい権力闘争を繰り広げ、帝国内の不安定さを抱えていました。1104年12月、このバルキヤールクが世を去ると、その後を継ぐ形で幼いマリク・シャー2世がスルターンの位に就きました。

セルジューク朝は、11世紀にトルクメン族の部族連合から発展し、中央アジア、ペルシア、イラク、シリア、そしてアナトリアの一部にまで及ぶ広大な版図を築き上げた大帝国でした。その最盛期は、彼の曽祖父にあたるアルプ・アルスラーン、そして祖父にあたるマリク・シャー1世の時代に訪れました。アルプ・アルスラーンは1071年のマラズギルトの戦いでビザンツ帝国を破り、アナトリアへのトルコ人進出の道を大きく開きました。続くマリク・シャー1世は、名宰相ニザーム・アル＝ムルクの補佐のもと、帝国の行政機構を整備し、文化・学術を奨励するなど、内政・外政両面でセルジューク朝の栄華を極めました。

しかし、偉大な祖父たちの死後、帝国は求心力を失い始め、有力なアミール（軍司令官や地方長官）の自立傾向が進み、スルターンの権威は徐々に低下していきました。特に、マリク・シャー1世の死後、その息子たち、すなわちマリク・シャー2世の父バルキヤールクとその叔父たちとの間で激しい後継者争いが勃発し、帝国の統一は揺らぎ始めました。マリク・シャー2世が即位した1104年末も、このような混乱の時代の中にありました。

マリク・シャー2世がスルターンの位を継承したものの、彼の治世は極めて短く、わずか数ヶ月で突然の死によって幕を閉じました。1105年のことです。幼くして即位し、具体的な統治の実績や歴史的な出来事に関する記録はほとんど伝えられていません。彼の早世は、父バルキヤールクの死によって一時的に収まったかに見えた後継者問題を再燃させることになりました。

彼の死後、スルターンの位を継いだのは、父バルキヤールクと長年争っていた叔父のムハンマド・タパルでした。ムハンマド・タパルは、この継承によってセルジューク朝の主要な支配権を握ることになります。マリク・シャー2世の短い生涯は、セルジューク朝がその最盛期を過ぎ、親族間の権力争いや地方勢力の台頭によって不安定な時代へと移行していく過程の一つの悲劇的な挿話として位置づけることができるでしょう。彼は、偉大な祖父たちの輝かしい血統を受け継ぎながらも、激動の時代に翻弄され、歴史の表舞台にわずかな足跡を残したのみで姿を消した人物と言えます。彼の治世の短さゆえに、歴史資料における記述も乏しく、その生涯の詳細は現代においては十分に解明されていません。

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