ムハンマド・タパル

ムハンマド・タパルの生涯：セルジューク朝の動乱と統治

ムハンマド・タパル（1082年 - 1118年）は、セルジューク朝のスルターン、マリク・シャーの子として生まれました。彼の人生は、兄弟間の権力闘争、そしてニザール派との対立の中で展開されました。彼の治世は、セルジューク朝の分裂と再編を象徴するものと言えるでしょう。

権力闘争と領土分割

1100年、ムハンマドは異母兄弟であるバルキヤールクと国家の実権を争い、激しい戦いを繰り広げます。当初、ムハンマドはマリクの称号とアルメニア、アゼルバイジャンを与えられましたが、これに不満を抱き反乱を起こします。しかし、最終的にはアルメニアへの撤退を余儀なくされました。1104年、バルキヤールクが病に倒れると、両者は国家分割に合意します。この和約により、イラン中央部はバルキヤールク、アゼルバイジャン、アルメニア、北イラクはムハンマド、そしてゴルガーン、ホラーサーン地方は同母弟のサンジャルが領有することとなりました。

1105年にバルキヤールクが亡くなると、ムハンマドはスルターンとして即位し、イラン西部とイラクを中心とする西側を支配下に置きました。一方、ホラーサーンを中心とする東側はサンジャルが統治し、セルジューク朝は東西に分かれることとなりました。

ニザール派との対立

ムハンマドの治世において、最も重要な出来事の一つが、アラムート城砦を拠点とするニザール派（暗殺教団）に対する弾圧です。1106年、ムハンマドはニザール派の城塞を制圧し、バーワンド朝の君主シャフリヤール4世にニザール派への軍事行動を命じますが、シャフリヤールはこれを拒否します。その後、ムハンマドはサーリーを占領するために派兵しますが、シャフリヤールとその子カリン3世の軍に敗北を喫しました。その後、シャフリヤールに人質を要求し、王子アリーを人質として受け入れます。ムハンマドはアリーに好印象を抱き、娘との結婚を提案しますが、アリーはこれを辞退し、代わりにカリン3世との結婚を願い出たため、カリン3世が王女と結婚することになりました。

宰相の交代劇

1106年/07年、宰相ニザームルムルクの子であるアフマド・イブン・ニザームルムルクが宮廷に現れ、ハマダーンの統治者に対する不平を訴えました。ムハンマドは、異端の疑いで処刑された先代の宰相に代わり、アフマドを宰相に任命し、父のニザームルムルクが有していた称号を与えました。しかし、1109年にアフマドは解任され、ハティル・アル＝マリク・アブー・マンスール・マイブディーが後任の宰相となりました。

軍事活動と対外関係

1107年、ムハンマドはニザール派の山城シャー・ディズを陥落させ、大ダーイーのアフマド・アッターシュを処刑しました。また、同年にアレッポの支配者リドワーンと同盟を結び、ルーム・セルジューク朝の君主クルチ・アルスラーン1世と交戦し、これを戦死させました。

さらに、ムハンマドはイラクでも軍事活動を展開し、「アラブ人の王」を称するマズヤド朝の支配者スィドカ1世に勝利を収めました。

その後

1118年、ムハンマド1世は死去し、息子のマフムード2世が後を継ぎました。彼の短い治世は、兄弟間の権力闘争、ニザール派の弾圧、周辺諸国との複雑な関係という、当時のセルジューク朝の混迷を象徴していました。ムハンマドの統治は、その後のセルジューク朝の衰退を予感させるものであり、彼の生涯はセルジューク朝史において重要な位置を占めています。

ムハンマド・タパルの生涯は、セルジューク朝の内紛、ニザール派との対立、そして周辺勢力との複雑な外交関係が絡み合った、動乱の時代を生き抜いたスルターンの姿を伝えています。彼の治世は、セルジューク朝の歴史において重要な転換点となり、後の歴史に大きな影響を与えました。

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