マリー・ルイーズ・ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュ

マリー・ルイーズ・アンリエット・ジャンヌ・ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュ（1725年 8月15日 - 1781年 9月または1793年）は、ブルボン朝時代のフランス王国を生きた高位貴族の女性です。ブイヨン公シャルル・ゴドフロワと、ポーランド王ヤン・ソビェスキの孫にあたるマリー・シャルロット・ソビェスカ公女の間に長女として生まれました。その高貴な血筋から、宮廷では「オーヴェルニュ姫」の敬称で呼ばれていました。特に母親を通じてポーランド王家ソビェスキ家の莫大な財産を相続したため、屈指の資産家令嬢として知られ、ルイ15世国王も彼女にふさわしい縁談を探すのに尽力したと伝えられています。

彼女の最初の結婚話は、モナコ公オノレ3世との間でした。1741年1月26日には宮廷日報で正式に婚約が発表されるに至りますが、この縁談は最終的に実現しませんでした。その後、1743年 2月19日にパリでモンバゾン公ジュール・ド・ロアンと結婚しました。二人の間には、二年後に一人息子アンリ・ルイ・マリーが生まれています。

彼女の人生で最も世間の耳目を集めたのは、母方の従兄にあたるジャコバイトの王位請求者、チャールズ・エドワード・ステュアート（「小僭称者」として知られる）との恋愛関係でした。二人の関係は、1746年 11月にマリー・ルイーズが天然痘を患ったことから始まります。同じヴェルサイユ宮廷に滞在していたチャールズは、彼女の病状を案じて手紙を送ったことが、二人の距離を縮めるきっかけとなりました。病から回復した1747年 8月、二人は面会し、やがて深く惹かれ合いました。夫ジュール公爵との間にはそれまで目立った問題はなかったものの、公爵夫人の新たな恋愛関係は、とりわけ姑にあたるゲメネ公妃の厳しい監視下に置かれることとなります。

夫が戦場（ベルヘン・オプ・ゾーム攻囲戦）で不在の間も、彼女は姑によって買収された召使たちによって常に監視される状態でした。こうした状況下で、二人の密会は深夜、パリの街を駆ける馬車の中で行われるなど、極めて秘密裏に進められたとされます。しかし、ゲメネ公妃は既にパリ市警に二人の関係を通報しており、市警は密会の状況を記した報告書を公妃に提出していたのです。

公爵夫人はやがてチャールズとの間に子を宿しますが、夫モンバゾン公爵は周囲に隠そうとしなかったため、二人の関係の噂は瞬く間に広まりました。1748年 1月、彼女は実父であるブイヨン公と姑ゲメネ公妃の面前で、チャールズへの別れの手紙を書くことを強要されます。一方で、世間の噂が真実でないように見せかけるため、チャールズは以前と同様に公爵夫妻の屋敷を友人として訪れることが許されるという奇妙な状況が続きました。しかし、その約三か月後、チャールズが別の女性（クレメンティーナ・ウォーキンショー）を公然と妾にしたことを公爵夫人に告げたことで、二人の関係は完全に終焉を迎えたのです。

1748年 7月28日、公爵夫人は男児を出産し、シャルル・ゴドフロワと名付けました。モンバゾン公爵は、この子を自らの息子として認知しています。姑ゲメネ公妃は、ローマに亡命中のチャールズの父「大僭称者」ジェームズ・ステュアートにこの子の誕生を知らせましたが、同時に彼を自身の孫とは考えないよう念を押しています。ロアン家の一員として認められたにもかかわらず、この夭折した子は後世の系図研究などにおいて、その存在が見過ごされたり、無視されたりすることが少なくありません。公子シャルル・ゴドフロワは、生後わずか数ヶ月でその短い生涯を終えました。

この恋愛スキャンダルは、チャールズ・エドワード・ステュアートの立場にも大きな影響を与えました。彼はフランス宮廷からの庇護を失うこととなり、かつてルイ15世が進めていた、末娘マダム・ルイーズとの縁談もこれにより完全に破談となりました。そして、エクス・ラ・シャペル条約の取り決めに従う形で、チャールズはフランス王国領から追放されるに至ったのです。

モンバゾン公爵夫人は、この一件の後は夫ジュール公爵に対して貞節を守り、宮廷の有力貴族夫人として宗教や慈善活動に専念する敬虔な生活を送ったとされることが多いです。彼女の最期については二つの説が存在します。一つは1781年 9月に56歳で自然死したというもの、もう一つはフランス革命期の1793年に67歳から68歳でギロチンにより処刑されたというものです。特に後者の革命期に処刑されたという説が、広く伝えられています。

夫ジュール・ド・ロアンとの間には息子が一人います。

アンリ・ルイ・マリー・ド・ロアン（1745年 - 1809年）：ゲメネ公、モンバゾン公

愛人チャールズ・エドワード・ステュアートとの間にも息子が一人いますが、この子は夫モンバゾン公爵に認知されたものの、生後間もなく亡くなっています。

シャルル・ゴドフロワ・ソフィー・ジュール・マリー・ド・ロアン（1748年 7月28日 - 1748年 12月または1749年 1月18日）

フィクションの世界では、テレビドラマシリーズ『アウトランダー』のシーズン2エピソード2に、「ルイーズ・ド・ロアン」として登場しており、クレール・セルモヌが演じています。

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