マルウィヤ・ミナレット

マルウィーヤ・ミナレットは、イラクのサーマッラーにある大モスクに付随する、螺旋状のミナレットです。アッバース朝の第8代カリフ、ムウタスィムによって建設され、849年に着工、852年に完成しました。イラクの至宝と称されるこのミナレットは、高さ53メートルを誇り、基壇から頂上まで螺旋状の階段で繋がっています。階段の外側には柵がありませんが、内側には手すりが設けられています。

土台は日干し煉瓦で作られ、焼き煉瓦と瀝青で補強されています。上から見ると、一定の幅の通路が心棒に巻き付いたようなアルキメデス螺旋を描いています。この独特な形状は、古代メソポタミアのジグラットの影響を受けていると考えられています。世界には、このマルウィーヤ・ミナレットを含め、螺旋式のミナレットは3つしか存在しません。

サーマッラーは短期間アッバース朝の首都でしたが、その後、首都はバグダードに戻り、サーマッラーは都市ごと放棄されました。その結果、サーマッラーの大モスクは奇跡的に現在まで残っていますが、材質が日干し煉瓦であるため、風化による損傷が深刻です。バグダードにあったアッバース朝時代の建造物は、13世紀にモンゴル帝国の侵攻によって破壊されており、現存していません。

イラク戦争中、アメリカ軍はこのミナレットを監視塔として利用しました。しかし、2005年にはイラク軍レジスタンスの攻撃を受け、螺旋状の尖塔の頭頂部が損傷しました。現在でも修復作業が進められています。

2007年、マルウィーヤ・ミナレットを含む「サーマッラーの考古学都市」はユネスコの世界遺産に登録されました。しかし、イラクの情勢を考慮し、登録と同時に「危機にさらされている世界遺産」リストにも加えられました。世界遺産の登録基準は以下の通りです。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

マルウィーヤ・ミナレットは、その独特な形状と歴史的価値から、イラクを代表する重要な文化遺産の一つとして、世界的に知られています。

関連する説
マルウィーヤ・ミナレットとバベルの塔の関連性について、西欧人が描いたバベルの塔のモデルはマルウィーヤ・ミナレットであるという説がありますが、このミナレットの情報がヨーロッパへ伝わった証拠がなく、この説は可能性が低いと考えられています。

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