マルキユー

マルキユー株式会社：日本の釣り餌業界を牽引する老舗企業

マルキユー株式会社は、埼玉県桶川市に本社を置く、釣り餌を中心とした釣具メーカーです。釣り針のがまかつ、総合釣具メーカーのシマノ、グローブライドと並び、日本の釣具業界を代表するトップブランドとして知られています。

創業から現在まで：カイコから釣り餌へ

マルキユーの歴史は、1910年、長野県岡谷市に設立された「マルニ小口製肥合資会社」の大宮支店として始まりました。当初は製糸業が盛んな岡谷市のカイコのサナギを原料とした肥料の製造販売が事業の中心でした。その後、大宮市（現さいたま市）に進出し、片倉工業からサナギを仕入れて事業を展開。兄弟会社として、マルハチ（熊谷市）、マルジュウ（古河市）も存在していました。

1938年には「マルキユー小口油肥株式会社」に改組。養魚や養鶏用の飼料、食用油の製造販売へと事業を拡大し、現在の粉餌製造の礎を築きました。

釣り餌の製造販売を開始したのは1967年。既存メーカーがひしめく中、後発メーカーとして参入したマルキユーでしたが、サナギを原料とした「さなぎ粉」や、へら鮒釣り用の「赤へら」「青へら」、鯉釣り用の「大ごい」などが大ヒット商品となり、急成長を遂げます。高度経済成長期の追い風を受け、1970年代後半には業界トップブランドへと成長しました。

当初は淡水魚向けの製品が中心でしたが、1982年には海釣り用の餌「大チヌ」を発売。市場開拓に苦戦しながらも、その後発売された「チヌパワー」が大ヒットし、海釣りでの使用が一般的になる契機となりました。「グレパワー」「アジパワー」など、パワーシリーズ製品も市場拡大に貢献しています。1984年には社名を「マルキユー株式会社」に変更しました。

1994年にはさいたま新都心の開発に伴い、本社を現在の桶川市に移転。工場の効率化、自動化を推進しました。1993年には、それまで「つりえさ一筋」をスローガンとしてきた方針を転換し、ルアーフィッシングブームに乗り、ソフトルアーブランド「エコギア」を立ち上げました。エサメーカーならではの「匂いと味」へのこだわりが特徴で、匂いと味のカプセルをワームに混入するなど、釣果アップを追求した製品開発で知られています。エコギアブランドは、プロアングラーの田辺哲男氏との協業により、国内外で高い評価を獲得しました。

2003年には、田辺哲男氏の個人ブランド「ノリーズ」の事業を譲渡され、ハードルアーや釣竿の製造販売を開始。さらに、餌木ブランド「フィッシュリーグ」、ターミナルタックルブランド「プライムエリア」も立ち上げ、総合釣具メーカーとしての体制を構築しました。2013年には、ゲームフィッシング部が独立し、「WELL-F」を設立しました。

グローバル展開：中国市場での成功と課題

マルキユーの海外進出は1980年代に台湾への輸出から始まりました。その後、韓国、中国へと進出。中国市場では、低価格帯の商品開発により、品質の高さが評価され、競技用釣り餌として高い地位を確立しました。経済発展に伴い、高価格帯の商品への需要も高まり、輸出は順調に推移していますが、コピー商品の問題も発生しています。2003年には天津に現地法人を設立し、中国市場への対応を強化しています。2009年には英国に販売会社を設立し、欧州市場への展開も進めています。

その他

マルキユーは、長年にわたり数多くの釣り番組にスポンサーとして協賛しており、現在もサンテレビジョン「フィッシングライフ」に協賛しています。また、独自のキャラクター「九ちゃん」も人気です。桶川市の小学校の教科書にもマルキユーが取り上げられており、地元との連携も重視しています。

マルキユーは、創業以来、釣り餌というニッチな市場で独自の地位を築き、時代の変化に対応しながら、常に進化を続ける企業です。今後も、革新的な製品開発とグローバル展開を通じて、釣り業界の発展に貢献していくことが期待されます。

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