マルケルス2世 (ローマ教皇)

マルケルス2世（Marcellus II, 1501年5月6日 - 1555年5月1日）は、対抗宗教改革の時代にローマ教皇を務めた人物です。本名はマルチェッロ・チェルヴィーニ（Marcello Cervini）であり、自身の名をそのまま教皇名とした最後の教皇として知られています。彼はモンテファーノで生まれ、シエナ大学とローマ・ラ・サピエンツァ大学で学び、優れた学者としての地位を確立しました。

1539年、マルチェッロはその学識と人柄が認められ、教皇パウルス3世によって枢機卿に任命されました。その後、1540年にはレッジョ・エミリア司教、1544年にはグッビオ司教に任命され、教皇庁内での地位を急速に高めていきました。1545年に開会された重要な会議であるトリエント公会議では、ジャン・マリア・デルモンテ（後のユリウス3世）やレジナルド・ポールと共に共同議長を務め、その指導力を発揮しました。1548年にはバチカン図書館長に就任し、学術面での貢献も続けました。

1555年4月9日、マルケルスは対抗宗教改革を推進する期待を一身に背負い、教皇ユリウス3世の後継者として教皇に選出されました。しかし、コンクラーヴェでの疲労が蓄積しており、教皇着座式での儀式は彼の健康状態をさらに悪化させる結果となりました。彼は教皇に選出されてからわずか21日後の5月1日に急逝し、その短い在位期間は多くの人々に衝撃を与えました。彼の急逝は、教皇庁内外に大きな影響を与えたと言われています。

マルケルス2世の在位期間は非常に短かったものの、彼の名前は音楽史にも残っています。作曲家ジョヴァンニ・ダ・パレストリーナが作曲した「教皇マルチェルスのミサ曲」は、伝統的にこの教皇のために作られたとされています。このミサ曲は、パレストリーナの代表作の一つであり、ルネサンス音楽の傑作として高く評価されています。教皇の短い生涯は、宗教改革の時代における教皇の役割と、その政治的、文化的な影響力を示す象徴的な出来事として、歴史に刻まれています。



参考文献

インドロ・モンタネッリ、ロベルト・ジェルヴァーゾ著、藤沢道郎訳『ルネサンスの歴史 下 反宗教改革のイタリア』中央公論社、1982年。
P.G.マックスウェル・スチュアート著、月森左知・菅沼裕乃訳、高橋正男監修『ローマ教皇歴代誌』創元社、1999年。
マシュー・バンソン著、長崎恵子・長崎麻子訳『ローマ教皇事典』三交社、2000年。
学校法人 上智学院 新カトリック大事典編纂委員会編『新カトリック大事典 第4巻』研究社、2009年。

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