マルタケルト地区

マルタケルト地区は、かつてアルツァフ共和国（ナゴルノ・カラバフ共和国）が実効支配していた地区であり、中心都市はマルタケルト（アゼルバイジャン語名アグダラ）でした。2023年9月にナゴルノ・カラバフがアゼルバイジャンによって制圧されて以降は、名目上の行政区画となっています。

地理と位置

アルツァフの北東部に位置し、北はシャフミアン地区東部（アルツァフが領有権を主張し、アゼルバイジャンが実効支配）、東はアゼルバイジャンのタルタル県とアグダム県、南はアスケラン地区、南西はカシャタグ地区（2020年紛争後にアゼルバイジャンへ返還）、西はシャフミアン地区西部（2020年紛争後に返還）と接していました。2020年紛争以前の面積は1,795.1平方キロメートル、または2045.1平方キロメートルとする資料もあり、人口は19,800人でした。

歴史

前身は、アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国内のナゴルノ・カラバフ自治州マルダケルト地区（アゼルバイジャン語: Mardakert rayonu）です。ナゴルノ・カラバフ戦争（第一次ナゴルノ・カラバフ戦争、1988年 - 1994年）中に独立を宣言したアルツァフ共和国は、新たにマルタケルト地区を設置しました。アゼルバイジャンでは、アグダラ県への改名を経て1992年に旧マルダケルト地区が廃止されています。

1992年6月、アゼルバイジャン軍のゴランボイ作戦によりマルタケルトなどが失われましたが、1993年6月のマルタケルト解放でアルメニア軍が奪還し、旧自治州外のアイゲスタンやノル・アイゲスタンを占領・編入しました。停戦後、アルメニア人の再定住が始まりました。

2016年のナゴルノ・カラバフ紛争（6日間戦争）では、地区北東部のマタギスがアゼルバイジャン軍の攻撃を受けましたが、アルツァフがこれを守り抜きました。

2020年のナゴルノ・カラバフ紛争（第二次ナゴルノ・カラバフ戦争）では、アゼルバイジャン軍の攻撃によりマタギスやタリシュを失い、停戦協定でアイゲスタンやノル・アイゲスタンなど、旧自治州外の7村をアゼルバイジャンへ返還しました。

2023年のナゴルノ・カラバフ衝突（アゼルバイジャン攻勢）では、アゼルバイジャン軍が地区中部のサルサン貯水池へ進軍し、貯水池および道中のGetavanやDrmbonを占領しました。また、地区東部のジャンヤタグも占領しましたが、その際、ロシア平和維持部隊の6人が誤って攻撃され死亡する事故が発生しました。アルツァフが降伏した後、アゼルバイジャンはマルタケルト地区を再び支配下に置きました。

現在、アルツァフはナゴルノ・カラバフの実効支配を失いましたが、地区の首長は無給で公務を続けており、名目上は地区が存続している状況です。

行政区画

2020年1月時点で、1都市と42の農村共同体が所属していました。

都市

* マルタケルト (アゼルバイジャン語名: アグダラ)

村

（村の一覧は省略）

住民

2020年1月1日時点の法定人口は19,800人で、総人口の13%を占めています。住民のほとんどはアルメニア人です。自治州時代にはアゼルバイジャン人もいましたが、第一次ナゴルノ・カラバフ戦争中に脱出しています。

国勢調査ごとの地区人口および民族別人口の変遷は、以下の表の通りです。（表は省略）

この地域は、長年にわたる紛争とそれに伴う住民の移動、そして行政区画の変遷を経験しており、その歴史的背景が深く刻まれています。

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