マルチ・800

マルチ・800の歴史と特徴

マルチ・800とは、スズキのインドにおける子会社であるマルチ・スズキ・インディアによって生産された小型自動車で、1983年12月から2014年までの長い年月にわたり、インドの自動車市場で愛されてきました。この車は、その低価格と効率的なデザインから、特に都市部で重宝され、インド全土で数多くのドライバーに支持されました。

生産の背景とモデルバリエーション

初代モデルにあたる1983年から1986年までの期間、マルチ・800は5代目スズキ・フロンテおよび初代スズキ・アルトを基に製造されました。その後、1986年から2014年までは6代目スズキ・フロンテと2代目スズキ・アルトがベースとなり、特に2代目モデルは長い間基本設計が大きく変わることなく生産され続けました。

このモデルは当初の価格が20万ルピー程度であり、タタ・ナノが登場するまではインド最安の自動車として親しまれていました。その手頃な価格が多くの家庭にとって購入のきっかけとなり、結果として爆発的な人気を得ました。2004年には、マルチ・アルト（5代目ベース）が登場するまで、インドで最も売れた自動車としてその座を守っていました。

国内外での販売状況

マルチ・800はインド国内だけでなく、バングラデシュやスリランカ、さらにチリなど南アメリカにも輸出されました。特にチリなどの地域では「スズキ・マルチ」として販売されていた案件もあります。これにより、マルチ・800はインドを越えて世界にその名を広めました。

技術的スペック

エンジンは、スズキ・アルトと同じく直列3気筒のエンジンですが、800ccに排気量が強化されています。駆動方式は前輪駆動（FF）で、トランスミッションは4速または5速のマニュアルが搭載されています。また、コスト削減のために左側のミラーが省かれたモデルも存在しました。

2005年にはインドのBS3（ユーロ3相当）排ガス規制に適合したモデルが販売され、2008年にはCNGを使用するモデルも市場に登場しました。しかし、コストがかかることを理由にBS4（ユーロ4相当）への対応は断念され、2010年4月からはニューデリーやムンバイなどの主要都市での販売が中止されることになりました。

生産終了とその後

2014年1月18日、グルガーオン工場にてマルチ・800の最後の一台が完成し、31年間にわたる歴史の幕を閉じました。この間にインド国内では250万台以上が販売され、多くの人々の日常生活に寄与してきました。スペアパーツについては、購入から8〜10年間提供が保証されています。

また、2012年10月には後継モデルとして「マルチ・アルト800」が発表され、マルチ・800の流れを受け継ぐ形となりました。マルチ・800の成功は、インド市場における小型車の発展に大いに寄与したと言えるでしょう。

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