マルトデキストリン

マルトデキストリンとは

マルトデキストリン（Maltodextrin）は、トウモロコシやコムギなどのデンプンを、酵素の働きによって部分的に加水分解することで製造される多糖類の一種です。外見はクリーム色の吸湿性の高い粉末状です。

この物質は、体内で素早く消化吸収され、エネルギー源として利用されやすい特性を持っています。その吸収速度は、単糖であるブドウ糖（グルコース）と同程度とされています。味は砂糖と比較すると控えめな甘さで、匂いはほとんど感じられません。

構造とその特性

マルトデキストリンは、D-グルコースと呼ばれる単糖単位がいくつか連なってできた構造を持ちます。これらのグルコース単位は、主にα1,4-グリコシド結合という化学結合によって結合しています。マルトデキストリンとして市販されているものは、通常、3個から19個のグルコース単位が結合した様々な長さのオリゴ糖や多糖の混合物として得られます。

マルトデキストリンの品質や性質は、「デキストロース当量（DE値）」という指標によって示されます。DE値は、デンプンがどの程度分解されて還元糖（主にブドウ糖）が生成したかを示す尺度で、完全に分解されたブドウ糖のDE値を100とします。マルトデキストリンのDE値は一般的に10から20の範囲です。DE値が高いほど、含まれる糖鎖の長さは短くなり、甘味が増したり、水への溶解度が高まったりする傾向があります。

なお、DE値が20を超えるものはグルコースシロップ、DE値が10以下のものはデキストリンとして分類されることがあります。

製造方法

マルトデキストリンの製造は、デンプンを原料として、適切な酵素を用いて加水分解反応を行うことによって行われます。原料となるデンプンの種類は地域によって異なり、例えばアメリカ合衆国ではトウモロコシデンプンが多く使われる一方、ヨーロッパではコムギデンプンが主に利用されるといった傾向が見られます。

コムギデンプンを原料とした場合、グルテンの含有が懸念されることがあります。しかし、マルトデキストリンの製造工程では、デンプンからタンパク質成分が高度に除去されるため、最終製品としてのマルトデキストリンに含まれるグルテンは極めて微量であるとされています。ただし、グルテン不耐症やセリアック病の方への配慮から、原料がコムギであることを表示することが推奨される場合があります。

用途と利点

マルトデキストリンは、その多様な機能性から食品を中心に幅広い分野で利用されています。

エネルギー補給: 消化吸収が速く、効率的なエネルギー源となるため、スポーツドリンクやエネルギー補給用のゼリー飲料、粉末飲料などに広く配合されています。手軽にカロリーを摂取したい場合や、速やかなエネルギー補給が求められる場面に適しています。砂糖と同程度のカロリーを持ちながら、甘さが控えめなので、大量に摂取しても甘くなりすぎないという利点があります。
増粘・物性改善: 食品にとろみを与える増粘剤として利用されるほか、製品の口当たりや舌触りを滑らかにしたり、粉末の固結を防いだり、風味を安定させたりする目的で使用されます。他の食品添加物、例えばキサンタンガムなどと組み合わせて使われることもあります。
* その他: 血糖値の上昇が比較的緩やかであるとされることや、控えめな甘味から、介護食や医療用の栄養剤、甘さ控えめの加工食品などにも利用されます。また、広義にはデキストリンに分類され、粉飴（こなあめ）の主成分としても知られていますが、両者はデキストロース当量によって区別されることがあります。

マルトデキストリンは、その速やかな消化吸収性と多様な機能性により、現代の食品産業において重要な素材の一つとなっています。

関連項目

• - デキストリン
• - マルトース
• - 甘味料
• - 糖アルコール

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