マルバハタケムシロ

マルバハタケムシロについて

マルバハタケムシロ（学名：Lobelia loochooensis）は、キキョウ科ミゾカクシ属に属する小型の多年生植物です。この植物は琉球諸島の固有種であり、その分布は奄美大島、沖縄本島、久米島に限定されています。しかし、沖縄本島南部では開発の影響で絶滅しており、久米島でもその生育が確認されたのは再発見以降のことです。日本の環境省による2025年版レッドデータブックでは、絶滅危惧IA類（CR）に指定されています。これは、本種が非常に危険な状況にあることを示しています。

特徴

マルバハタケムシロは、全体的に無毛の常緑植物として成長します。その葉は互生しており、形状は円形から倒円形で、肉質で光沢があり、長さはおおよそ6mm、幅は約5mmです。葉の縁は全縁またはわずかに鋸歯があり、短い葉柄を持っています。また、枝は四方に広がり、地面を這うように分枝します。このような特異な成長様式は、特定の環境に適応した結果と考えられています。

花の部分は茎の先端に白色または淡紫色の花が咲き、長さは8〜9mmほどです。花は初夏から秋にかけて開花し、萼は5つに裂かれていて、長さは約3mmです。花冠や葯には毛がなく、種子は網目模様を持った卵型で、長さは約0.4mmです。染色体数は2n=14とされています。

近縁種との関係

この植物は日本の固有種ですが、オセアニアに生息するヒプセラ節の植物とも似ており、分子系統解析の結果、マルバハタケムシロはオーストラリアの近縁種からの進化が示唆されています。特にニュージーランドの種よりも、オーストラリアの種に近いことが明らかにされ、隔離分布の理由としては、風や海流による分散が考えにくく、渡り鳥による移動が関与している可能性があります。

草本の特性を持つ、この植物はサクラダソウやミゾカクシと共通する点が多く、種子の外壁には丸く扁平な細胞が見られ、葯の先端には大きな突起が2つあることも特徴です。また、和名の「マルバハタケムシロ」は「丸い葉を持つハタケムシロ」という意味で、ハタケムシロの別称でもあります。

分布と保護の状況

マルバハタケムシロは、海岸沿いの風が強い場所や岩場で、清水が湧き出る特異な環境に育ちます。残念ながら、開発により多くの個体が影響を受けており、特に沖縄本島の南部は絶滅しています。奄美大島と久米島においてはまだ確認されていますが、今後の保護と生息地の維持が求められています。日本では鹿児島県と沖縄県によって絶滅危惧I類（CR+EN）に指定されており、その保存が急務です。

最近の調査では、2007年に奄美大島の名瀬東部、名瀬西部、古仁屋、久米島のはての浜などの地域で生育が確認されています。栄養成分や生育環境に適した条件が見つかれば、より多くの生命を育むことができるかもしれません。

さらに、沖縄の環境保護団体が屋上緑化の実験にこの植物を選定した結果、短期間で枯死してしまったという事例もあります。今後、マルバハタケムシロは保護・復元活動の中でその生息地を守っていく必要があります。

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