マル生運動

マル生運動とは

マル生運動とは、1960年代から1970年代前半にかけて、日本国有鉄道（国鉄）や郵政省で行われた生産性向上を目的とする運動のことです。「生産性向上運動」とも呼ばれ、運動に関わる書類に「生」の字を丸で囲んだスタンプが押されたことから「マル生」と通称されました。

しかし、この運動は労働組合、特に国鉄労働組合（国労）や国鉄動力車労働組合（動労）、全逓信労働組合（全逓）から強い反発を受け、「反マル生闘争」と呼ばれる激しい反対運動が繰り広げられることになりました。

マル生運動の経緯

1960年代末、国鉄の職場環境は悪化し、生産性の低下が問題視されていました。そこで、国鉄当局は日本[[生産性本部]]の協力を得て、生産性向上運動に取り組み始めました。

1970年3月には、職員管理室と能力開発課が設置され、各地の現場で管理職が先頭に立って運動を推進しました。しかし、労働者にとっては労働強化につながる側面があり、管理職の威圧的な態度や、国労・動労組合員の脱退工作、労使協調路線を掲げる鉄道労働組合（鉄労）への移籍工作などが問題視されるようになりました。

国労・動労は、日本社会党・日本共産党の支援を受け、国鉄当局と対決姿勢を強め、「反マル生闘争」を展開しました。各鉄道管理局単位で「生産性大会」が開催される際には、当局側と国労・動労組合員が激しく対立する場面も見られました。1971年10月5日に大阪厚生年金会館で開催された大会では、反対派約1,000人が会場周辺でピケを張り、大阪府警察の機動隊員500人が警戒に当たるなど、物々しい状況となりました。

また、当時は「マル生粉砕」などのスローガンが書かれた車両や、同様の趣旨のアジビラが大量に貼られた車両（いわゆる「アジ電車」）が首都圏だけでなく地方でも見られ、国鉄の労使対立を国民に強く印象付けました。

マル生運動の終焉

1971年10月8日、公共企業体等労働委員会（現：中央労働委員会）は、国労・動労から提訴された当局による組合運動介入16件のうち、2件について不当労働行為と判断し、勧告しました。マスコミもマル生を批判する論調を展開し、同年10月11日には当時の磯崎叡国鉄総裁が国会で陳謝する事態となり、国鉄における生産性向上運動は失敗に終わりました。

同年11月2日からは紛争対策委員会が発足し、国労・動労は約1,000名の中間管理職の追放を求め、当局はこれに応じました。管理者への暴行で解雇された職員の再雇用まで行われました。

マル生運動の影響

「反マル生闘争」の勝利で勢いを得た国労・動労は、それまでの不当労働行為やパワーハラスメントに関する管理職への糾弾闘争を開始するとともに、公共企業体職員のストライキ権奪還を目指してスト権ストへと突入することになりました。

郵政におけるマル生運動

郵政においても、国鉄と同様に1960年代に入ると労働組合の発言力が増し、最大労組であった全逓信労働組合（全逓）がストライキや郵便物の遅配などの「闘争」を繰り広げました。そのため、郵政当局も1962年度からマル生運動を展開することになりました。

全逓は当然のように反対しましたが、全逓の中でも当局に協力的なグループは郵政当局の庇護の下で1965年に全日本郵政労働組合（全郵政）を結成し、マル生運動に協力しました。全逓と全郵政の間では激しい引き抜き合戦が起こり、逮捕者も出る事態となりました。

このような状況下で、1978年末から1979年初めにかけて全逓が年賀状の取扱拒否（越年闘争）を行い、年賀状配達が混乱し、4億3千万通もの年賀状に影響が出ました。この影響で全逓は世間から大きな批判を受け、郵政当局も1979年4月28日に全逓組合員に対し懲戒免職58名を含む8183名の大量処分を行いました。

越年闘争が完全に裏目に出た全逓は、懲戒免職処分を受けた組合員への賃金補填を続けたために組合の財政が傾き、組織力が低下しました。最終的に全逓と全郵政は2007年に合併し、国労とは異なり、組織や組合員の生活を守ることができました。

このように、同じマル生運動であっても、国鉄と郵政では異なる結末を迎えることとなりました。

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