マレア岬

ギリシャ南部のペロポネソス半島から南へ突き出す三つの半島の一つがマレア岬（Ακρωτήριον Μαλέας）です。ペロポネソス半島の南東端に位置し、西側にはラコニア湾、東側にはエーゲ海が広がっています。地元ではカボマリアス（Καβομαλιάς）という口語的な呼び方もされることがあります。ペロポネソス半島南部の半島としては、マニ半島、メッシニア半島とともに知られています。この岬は、マタパン岬に次いでギリシャ本土の最南端に近い場所にあり、かつては地中海でも屈指の規模を誇る灯台が設置されていました。

地理

マレア岬は行政区分上、ラコニア県の地域単位に含まれています。半島全体と東海岸の一部はモネンバシア自治体の管轄下にあり、半島南西端にはヴィオス市町村があり、半島で最も大きな町であるネアポリ・ヴォイオンが位置しています。この岬のすぐ西側には、長く明るい砂浜で名高いエラフォニソス島が浮かんでいます。さらに南へ進むと、ギリシャ神話で女神アプロディテが上陸した地とされるキティラ島があります。マレア岬周辺の海域は、その気候の変わりやすさと突発的な強い嵐のため、古くから船乗りたちにとって極めて困難な場所として恐れられてきました。

歴史

古くはアルゴリスの領土であったマレア岬ですが、後にスパルタによってアルゴリス南部やキティラ島とともに奪われ、ラコニアの一部となりました。古代においては、マレア岬は地中海の北東部と西部を結ぶ主要な海上交通路の一つとして、活発な船の往来がありました。しかし、その航海上の危険性は古くから広く知られており、すでに紀元前8世紀のホメロスの叙事詩『オデュッセイア』では、マレア岬の荒れ狂う天候が詳細に語られています。トロイアからの帰路についたオデュッセウスやメネラオスは、ここで強風に見舞われ、針路から大きく外れ、帰国までに長い年月を要したと歌われています。オデュッセウスは迂回しようとして潮流と北風に捕まりロトパゴイの国へ流され、メネラオスの一行はゼウスが起こした嵐に襲われ、クレタ島やエジプトに漂着しました。また、アルゴナウタイの伝説においても、彼らはマレア岬付近で遭遇した強風によって遠くリビアまで流されたとされています。

1893年にコリントス運河が開通し、ペロポネソス半島を大きく迂回することなくコリンティアコス湾へ航行できるようになると、マレア岬の海上交通路としての絶対的な重要性は相対的に低下しました。しかし、コリントス運河は通過できる船の大きさに制限があるため、大型船を含む多くの船舶にとっては依然としてマレア岬を回るルートが不可欠であり、現在も大量の海上交通があります。第二次世界大戦中、ドイツ占領軍は主要な輸送航路を防衛・監視するためにこの岬に軍事施設の建設を始めましたが、1944年の占領終了により未完成に終わりました。

神話

ギリシア神話の伝承によれば、マレア岬の地は神話的な種族が住まう場所とされていました。旅行家パウサニアスが引用するピンダロスの詩には、ニュンペーであるナイアスと結婚したシレノスがマレアの山で育ったという記述があります。さらに広く知られているのは、賢者として名高いケンタウロス族のケイロンがマレア岬に住んでいたという物語です。ケイロンを除くケンタウロス族がヘラクレスとの間に争いを起こした際、彼らはケイロンの住むマレア岬へと逃げ込みました。その後、ケンタウロス族はマレア岬から各地へ散り、その一部はマレアの山中に隠れ住んだと伝えられています。

地質

マレア岬からエラフォニソス島にかけての広範囲には、約300万年前の森林が化石化した状態で残されています。特にクリティナ山（όρους Κριθίνα）の南西斜面にはこの化石林がよく保存されており、その貴重さからジオパークに指定され、保護されています。この地域の地質は、古代の自然環境を知る上で重要な手がかりを提供しています。

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