メチルエルゴメトリン

メチルエルゴメトリン

メチルエルゴメトリン（またはメチルエルゴノビン）は、エルゴリンおよびリゼルグ酸アミド類に分類される化合物であり、エルゴノビンの合成類縁体です。主に産婦人科領域で、子宮収縮作用を利用して産後の出血を予防する目的で使用されています。代表的な製品名としては、「メテルギン」（ノバルティス製造販売）や「パルタンM」（持田製薬製造販売）があります。

適用

メチルエルゴメトリンは、以下のような状況において、子宮収縮の促進、子宮出血の予防および治療のために用いられます。

胎盤娩出前後
弛緩出血
子宮復古不全
帝王切開術
流産
人工妊娠中絶

用途

産科領域

メチルエルゴメトリンは平滑筋収縮薬として作用し、特に子宮に対して強い影響を与えます。分娩時の過剰な出血を治療・予防する目的で使用されるほか、流産や人工妊娠中絶の際にも用いられます。また、胎盤娩出を促進する目的で使用されることもあります。錠剤、水溶液、注射薬などの形態で提供されています。

片頭痛

片頭痛の予防や急性期治療に用いられることもあります。メチルエルゴメトリンは、メチセルジドの活性代謝物です。

禁忌

以下に該当する場合は、メチルエルゴメトリンの使用は禁忌とされています。

高血圧症
妊娠子癇
HIV陽性患者で、特定のプロテアーゼ阻害剤（デラビルジン、エファビレンツ）を服用中の場合

副作用

主な副作用として、以下のものが挙げられます。

吐き気、嘔吐、下痢（コリン作動性によるもの）
めまい
肺高血圧症
冠動脈の収縮
重症高血圧（特に妊娠高血圧の場合）
痙攣

過量投与時には、筋攣縮、呼吸抑制、昏睡などを引き起こす可能性があります。

相互作用

メチルエルゴメトリンは、肝臓のCYP3A4を阻害する薬物と相互作用を起こす可能性があります。具体的には、アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗生物質、多くのHIV治療薬などが該当します。また、交感神経作動薬や他の麦角アルカロイドとの併用により、血管収縮作用が増強される可能性があります。

作用機序

メチルエルゴメトリンは、セロトニン、ドーパミン、α-アドレナリン受容体の部分的アゴニスト/アンタゴニストとして作用します。特に、5-HT2Aセロトニン受容体を介して子宮平滑筋を収縮させる効果が強く、全身の血管への影響は他の麦角アルカロイドに比べて少ないとされています。

メチルエルゴメトリンはエルゴノビンの合成類縁体であり、エルゴノビン自体も麦角アルカロイドの一種です。エルゴリン系化合物には、エルゴメトリン、リゼルグ酸、リゼルグ酸アミド（エルジン）、LSDなどが含まれます。

その他

ジョナサン・オットの研究によると、通常の10倍量にあたる2mgのエルゴノビンを摂取すると幻覚作用が生じると報告されています。また、メテルギン（メチルエルゴメトリンの製品名）2mgを用いた自己実験では、LSDに類似した効果が確認されたものの、LSDとは異なり身体的な不快感が伴うため、完全な代替物とはなりえないと結論付けています。

関連項目

エルゴメトリン
* エルゴタミン

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