マワーリー

マワーリーとは：イスラム初期の被征服民

マワーリー（単数形：マウラ）とは、イスラム教の勢力拡大期に、アラブ人によって征服された非アラブ人のことです。改宗民、庇護民、被征服民、解放奴隷など、その立場は多岐に渡ります。イスラム帝国の拡大とともに、その数は増大し、初期イスラム社会において重要な役割を果たしました。

ウマイヤ朝の支配とマワーリーの不満

イスラム帝国最初の世襲王朝であるウマイヤ朝は、アラブ人を優遇する政策を採りました。これは、イスラム教の教えである「コーランの下での平等」とは相容れないものであり、多くの人々に不満を抱かせました。特に、マワーリーと呼ばれた被征服民たちは、アラブ人との差別的な待遇に強い不満を募らせていました。税制面での不平等、社会的な差別の存在などが、その不満の根源にありました。

アッバース革命の原動力

このような状況下で、マワーリーたちは、ウマイヤ朝打倒を目指すアッバース朝の運動に共鳴し、その原動力となりました。彼らは、ウマイヤ朝の支配を終わらせ、より平等な社会の実現を願っていました。アッバース朝は、マワーリーを含む非アラブ人の支持を得て、ウマイヤ朝を倒し、新たな王朝を築きました。

イスラム社会におけるマワーリー

イスラム教は、当初「コーランか、剣か、貢納か」という言葉に表されるように、イスラム教の流布を大義として戦いを広げましたが、実際には異教徒のイスラム教への改宗には積極的ではありませんでした。イスラム教自体が安易な改宗を嫌う性質を持っていたことに加え、イスラム社会にとっては、異教徒が人頭税（ジズヤ）や地租（ハラージュ）を納めなくなることは、収入減に繋がるという経済的な理由もありました。そのため、マワーリーはイスラム教に改宗した後も、アラブ人と完全に平等な権利を得ることは難しい状況が続きました。しかし、彼らはイスラム社会の一員として、文化、経済、政治など、様々な面で貢献しました。

マワーリーの存在は、初期イスラム社会の複雑な構造を理解する上で重要な要素です。彼らの不満とエネルギーが、アッバース革命を引き起こし、イスラム世界の歴史を大きく変えたと言えるでしょう。

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