マンサク(満作・万作)
マンサク(
学名:
Hamamelis japonica)は、
マンサク科マンサク属に分類される落
葉性の小高木です。
早春に他の植物に先駆けて開
花する特徴を持ち、その鮮やかな
黄色の
花は、
春の訪れを告げる象徴として親しまれています。
名称の由来
和名である「マンサク」の語源は、はっきりとは特定されていません。有力な説としては、
早春にいち早く
花を咲かせることから「まず咲く」や「真っ先」が転訛したとする説や、黄金色の
花が多数咲く様子から豊作を連想させ「万年豊作」に由来するという説があります。また、
花が満開になる様子から「満咲き」が転じたという説も存在します。
別名として、
葉の形が左右非対称で不揃いなことから「カタソゲ(片削げ)」と呼ばれることもあります。
分布と生育環境
マンサクは、日本の
北海道渡島半島から
本州、
四国、
九州にかけて広く分布しています。山地によく見られ、山林や
雑木林、谷筋の林などに自生します。また、その美しい
花姿から、
庭木としても広く植えられています。
形態と生態
マンサクは落
葉広
葉樹の小高木で、多くは高さ3
メートル程度の灌木ですが、成長すると5~6
メートルに達することもあります。
樹皮は灰褐色で滑らか、一年枝は淡褐色で毛が生えています。
葉は互生し、長さ5~15
センチメートルの菱形状の円形から広卵形で、左右が非対称なのが特徴です。
葉の縁には波状の鋸歯があり、表面は濃い緑色で光沢があり、裏面の
葉脈には淡褐色の毛が密生しています。秋になると黄
葉し、
黄色から橙色へと変化し、落
葉すると褐色になります。日当たりの良い場所では、赤みを帯びる個体も見られます。
開
花期は2~3月で、
葉よりも先に
黄色い
花が房状に多数咲きます。
花は直径3~4
センチメートルで、ほのかな芳香があります。
花弁、萼片、雄しべ、仮雄しべがそれぞれ4つずつあり、雌しべは2本の
花柱を持ちます。
花弁は細長い紐状でねじれており、萼片は暗赤褐色で円形に反り返ります。
果実は9~10月に成熟する
蒴果で、直径約10
ミリメートルの卵状球形をしており、褐色の短い毛が密生しています。中には黒色の大きな
種子が2つ入っており、ホウセンカのように成熟すると果皮が裂けて
種子が飛び散ります。
冬芽は互生し、短毛が密生しており、2枚の芽鱗は落ちやすく裸芽となります。頂芽は長楕円形で柄があり、
花芽は卵球状で下を向いた柄の先に2~4個つきます。側芽は
葉芽です。
葉痕は半円形や三角形で
維管束痕が3つあります。
利用
マンサクは、晩
冬の寒さの中でいち早く開
花し、
春の訪れを告げる木として、
庭木や公園樹として広く利用されています。
欧米でも人気があり、
植栽されています。また、
樹皮の繊維が丈夫なため、岐阜県
白川郷の
合掌造りにも用いられています。
黄色い
花は切り
花としても楽しまれ、赤い
花を咲かせるアカバナマンサクや、
花弁の基部が紅色のニシキマンサクなどの
品種もあります。
マンサクには、以下の
亜種、
変種、
品種が知られています。
オオバマンサク (H. j. subsp. megalophylla
): 本州中部地方以北に分布する亜種。
ウラジロマルバマンサク (
H. j. var. discolor):
北陸地方に分布する
変種。
ウラジロマンサク (H. j. var. glauca
): 近畿・中部地方に分布する変種。
アテツマンサク (
H. j. var. bitchuensis):
中国・
四国地方(
愛媛県)に分布する
変種。萼片が
黄色で、
葉の両面に星状毛があります。
環境省レッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されています。
アカバナマンサク(赤花満作) (H. j. f. incarnata
): 花弁が赤い品種。
ニシキマンサク(錦満作) (
H. j. var. discolor f. flavopurpurascens): ウラジロマルバマンサクの
花弁の基部が紅色をしている
品種。
マルバマンサク(丸葉満作) (H. j. var. discolor f. obtusata
): ウラジロマルバマンサクの品種とされ、北海道南部から本州の日本海側にかけて分布。葉の上半分が半円形をしている。
マンサク属
マンサク属 (Hamamelis
) は、マンサク科に属する属の一つで、東アジアと北米に約4種が分布しています。
マンサク (
Hamamelis japonica): 日本
固有種。
シナマンサク (Hamamelis mollis
): 中国原産。花の香りが強く、冬の枯れ葉が春まで残るのが特徴。
ハヤザキマンサク (
Hamamelis vernalis)
アメリカマンサク (Hamamelis virginiana
): 北米原産。秋に花が咲き、葉や樹皮のエキスは収斂薬や化粧水として利用されます。
脚注
(参考文献の情報は省略)
関連項目
木の一覧
トキワマンサク属
外部リンク
Hamamelis japonica - National Center for Biotechnology Information(NCBI)
Hamamelis japonica - Encyclopedia of Life
マンサク - 植物雑学事典 - 岡山理科大学