マーキュリー・セーブル

マーキュリー・セーブルの歴史

マーキュリー・セーブルは、フォード・モーターがマーキュリーブランドで展開していた乗用車です。1980年代から2000年代にかけて、5世代にわたり様々なモデルが登場しました。この車は、フォード・トーラスと多くの部分を共有しつつ、マーキュリー独自の個性を打ち出したモデルとして知られています。

初代 (1986年-1991年)

1985年、セーブルはフォード・トーラスのマーキュリー版としてデビューしました。その先進的な空力デザインは、セダンで0.33、ワゴンで0.35という低いCd値を実現し、アメリカ市場で大ヒットを記録しました。日本では近鉄モータースによって1986年から販売が開始されました。ボディタイプは4ドアセダンとステーションワゴンが用意されました。

初代セーブルの特徴の一つは、フロントマスクとテールレンズのデザインです。セダンモデルは、サイドからリアへと回り込むラップアラウンドウィンドウと、ヘッドライトと連動して点灯するライトバーが特徴的でした。このライトバーは、その後のマーキュリー車だけでなく、他メーカーのデザインにも影響を与えるほど革新的なものでした。

エンジンは当初、3000cc V6 OHVと2500cc直4 OHVが用意されました。しかし、直4エンジンは人気がなく、1987年にはカタログ落ちしました。その後、1988年からは3800cc V6 OHVが搭載されるようになりました。トランスミッションは、V6モデルが4速AT、直4モデルが3速ATでした。乗車定員は、セダンが5/6人、ワゴンが7/8人でしたが、ワゴンの3列目シートは子供用・緊急用として設計され、大人には不向きでした。

日本では、ヘッドライトの形状から「デカ目」という愛称で親しまれました。初代セーブルは1991年に販売を終了し、翌年に2代目へとモデルチェンジしました。

2代目 (1992年-1995年)

1992年に登場した2代目セーブルは、エンジンや駆動系統は初代を踏襲し、外装と内装にマイナーチェンジが施されました。ヘッドライトが薄型化され、ライトバーも引き続き採用されました。テールレンズのデザインやトランクリッドの形状も変更されました。日本では1993年まで販売されました。

1995年には、スポーティ仕様のLTS (Luxury Touring Sedan) が登場しました。LTSは、本革バケットシートやトーラスLX用のアルミホイールなどが装備され、モデル末期のテコ入れとして販売されました。本来はトーラスSHOのセーブル版として企画されたものの、フォードはSHOとの競合を恐れて発売を中止していました。

3代目 (1996年-1999年)

1996年、セーブルは初のフルモデルチェンジを受けました。内外装が一新され、プラットフォームは先代のD186を改良したものが採用されました。ボディサイズは先代よりも大きくなり、エンジンは旧来のV6 OHVに加え、新設計の3L V6 DOHCが搭載されました。この世代のセーブルは、日本では販売されませんでした。

3代目の外観上の特徴は、4ドアセダンが4ライトウィンドウを採用したことです。これにより、リアドア以降の形状がトーラスとは異なり、セーブル独自の個性を打ち出しました。特徴的だったライトバーは廃止され、オーバルを基調とした有機的なデザインが採用されましたが、市場での評価はあまり高くありませんでした。

4代目 (2000年-2005年)

2000年に登場した4代目セーブルは、エンジンや駆動系統は先代を踏襲しつつ、内外装のマイナーチェンジが施されました。不評だったオーバルデザインを排除し、より保守的なデザインへと変更されました。特に、4ドアセダンのリアトランク周辺は大幅にデザインが変更されました。また、後部座席のルームスペースの改善やサスペンションセッティングの変更など、全体的に快適性が向上しました。しかし、販売状況は好転せず、2005年に生産が終了しました。

5代目 (2007年-2009年)

2007年 8月、セーブルは5代目として復活しました。ボディタイプは4ドアセダンのみとなり、全高が1500mmを超えるフルサイズセダンへと移行しました。実はこのモデルは、元々モンテゴとして販売されていたものが、モンテゴのフェイスリフトに伴いセーブルに改名されたものです。モンテゴの販売不振が、セーブルの名前を復活させる要因となりました。

5代目の変更点は、下位車種のミランと酷似したフロントマスク、テールレンズのデザイン変更とLED化、リアナンバープレートの設置場所変更などです。エンジンは、モンテゴの3000ccから3500cc V6 DOHCに変更され、トランスミッションもCVTから6速ATへと変更されました。

しかし、セーブルは2009年 4月30日をもって生産が中止され、後継車種も用意されないままモデル終了となりました。姉妹車のトーラスは2010年モデルとして新型が発表されましたが、セーブルは歴史に幕を下ろすことになりました。

マーキュリー・セーブル