マークルック

タイの伝統将棋「マークルック」：歴史、ルール、そして類似ゲームとの比較

マークルック（タイ語: หมากรุก, Makruk）は、タイ王国に伝わる伝統的なボードゲームであり、2人対戦で行われる戦略ゲームです。タイチェス、タイ将棋と呼ばれることもあります。古代インドのチャトランガを起源とし、隣国カンボジアのオク・チャトランとは駒の動きや配置が全く同じで、元々は同一のゲームであったと考えられています。ミャンマーのシットゥインとも駒の動きに類似性が見られ、共通の祖先を持つと考えられています。

歴史と起源

マークルックの起源は、古代インドのチャトランガにまで遡ると考えられています。ミャンマーの記録によると、8世紀頃にスリランカを経由して、ドヴァーラヴァティー王国（6～10世紀、チャオプラヤー川流域に栄えたモン族の王国とされる）に将棋様のゲームが伝えられたとされています。考古学的な証拠として、スコータイ朝（13世紀～1438年）の遺跡から駒が出土しており、それ以前からマークルックが存在していたことが示唆されています。

ルールと特徴

マークルックは、縦横8マスの盤上で行われます。各プレイヤーは6種類の駒を16個ずつ持ち、交互に駒を動かして相手の「クン」（君主、チェスのキング、将棋の玉将に相当）を詰めることで勝利します。駒は立体的な形状で、特に「ビア」（歩兵に相当）は小さな円盤状で、敵陣3段目に入ると「ビアガーイ」に成ることができます。成るルールには、敵陣3段目では必ず成る、敵陣2、3段目で任意、最下段で必ず成る、の2種類があり、事前にどちらを採用するかを決めます。

マークルックの特徴として、歩兵に相当するビアが初期配置で三段目に置かれ、敵陣三段目で成る点が挙げられます。これは日本将棋と共通する特徴であり、両者の関連性が研究されています。また、世界のチェス類の中でも原型を比較的よくとどめているゲームの一つであり、他の類似ゲームと比べて駒の動きが弱いという特徴も持ちます。走り駒は、飛車に相当する駒が2種類あるだけで、日本の将棋より少ないのが特徴です。

駒を取ると、その駒は盤上から除去され、再利用できません。千日手（3回の繰り返し）は引き分けとなり、連続王手の場合は王手をかけている側が手を変える必要があります。ステイルメイト（合法手がなく、チェックされていない状態）については、公式戦では事前に勝ち負け引き分けのいずれかを決める必要がありますが、近年は負けとすることが一般的になっています。

引き分け条件も複数存在し、片方のプレイヤーがクンだけになり、昇格していないビアがない場合、そのプレイヤーが一定の手数逃げ切れば引き分けとなります。その手数は相手の駒の種類と数によって決まります。また、双方にクン以外の駒があり、かつ昇格していないビアがいない場合、64手以内にクンを詰まされない場合は引き分けとなります。

名称

タイ語で「マークルック」は将棋類全般を意味します。例えば、日本の将棋は「マークルック・イープン」（日本マークルック）、シャンチーは「マークルック・チーン」（中国マークルック）と呼ばれます。これは、日本人がチェスを西洋将棋、シャンチーを中国将棋と呼ぶのと同様です。

カンボジア将棋（オク）との比較

カンボジアの将棋「オク」（Ok、クメール語: អុក）または「オク・チャトラン」（Ouk Chatrang、クメール語: អុកចត្រង）は、マークルックと非常に似ていますが、いくつかの違いがあります。例えば、キングの最初の動きでチェックされていない場合、ナイトのように動くことができたり、クイーンの最初の動きで2マス前に進むことができます。オクは12世紀からカンボジアで遊ばれていた証拠があり、アンコール[[遺跡]]のレリーフに描かれていることから、その歴史の長さがうかがえます。

マークルックは、その歴史と独特のルール、そして他のチェス類との関連性から、戦略ゲーム愛好家にとって魅力的なゲームと言えるでしょう。

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