マールワーリー語

マールワーリー語について

マールワーリー語（मारवाड़ी）は、インド・アーリア語派に属する言語の一つです。この言語は、主にインド共和国のラージャスターン州西部に広がる地域において話されています。また、地理的な広がりを持ち、インド国内では隣接するグジャラート州などにも話者コミュニティが存在します。さらに、インドとの国境を越え、パキスタン東部の一部地域にもマールワーリー語を母語とする人々が暮らしているとされています。

名称とその由来

この言語の名前である「マールワーリー」は、その主な話者地域に由来しています。現在のラージャスターン州内に位置する、かつてマールワール王国などが栄えた歴史的な地域名「マールワール」から名付けられました。この「マールワール」地域は、特にジョードプル市を中心とする一帯を指します。言語名としては、表記の揺れや発音の違いから、マルワーリー語、マールワール語、マルワール語、マルワディー語など、いくつかの別称で呼ばれることもあります。これらの名称はすべて、同じ言語またはその関連性の深い方言群を指していると考えられます。

言語コードと国際的な位置づけ

国際標準化機構（ISO）が定める言語コードであるISO 639-3において、マールワーリー語は「マクロランゲージ」（macrolanguage）として登録されています。マクロランゲージとは、いくつかの異なるが関連性の高い言語や方言群を一つの包括的な名称の下で扱うための分類です。この登録は、マールワーリー語が単一の均質な言語ではなく、内部に多様な方言を含んでいるという実態を反映していると考えられます。この分類によって、関連する下位言語や方言がそれぞれ固有のコードを持つ場合でも、より広範な言語コミュニティをマールワーリー語として参照することが可能となっています。

使用される文字体系

マールワーリー語の書き言葉には、主に二種類の文字体系が使用されています。最も広く用いられているのは、ヒンディー語など他の多くの北インドの言語でも採用されているデーヴァナーガリー文字（देवनागरी）です。この文字はアブギダ（子音に母音が結合した単位を基本とする文字体系）であり、インド亜大陸で広く普及しています。もう一つは、マハージャニー文字（महाजनी）と呼ばれる文字体系です。マハージャニー文字は、特に歴史的に商業や会計の記録に用いられてきた文字であり、デーヴァナーガリー文字とは異なる特徴を持っています。これらの文字体系を用いて、マールワーリー語の文献や記録が記述されてきました。現代においては、デーヴァナーガリー文字の使用が一般的となっています。

マールワーリー語は、その話者が暮らすラージャスターン州の文化や歴史と深く結びついており、地域のアイデンティティを形成する重要な要素の一つとなっています。地理的な広がりを持つ一方で、内部に多様な方言を含む複雑な言語状況を有しており、言語研究の対象としても興味深い存在です。

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