ミクラーシュ・ズリンダ

ミクラーシュ・ズリンダ（Mikuláš Dzurinda）は、1955年2月4日生まれのスロバキアの政治家です。彼はスロバキアの首相（1998年 - 2006年）、外相（2010年 - 2012年）を歴任し、中道右派政党であるスロバキア民主キリスト教連合・民主党（SDKÚ-DS）の党首を務めました。

経歴

ズリンダは、1979年にジリナ交通大学（現ジリナ大学）を卒業後、ジリナ交通研究所で経済研究員として勤務しました。その後、チェコスロバキア国鉄ブラチスラヴァ地域総局の情報技術部長を経て、1990年に政界入りしました。

1990年のキリスト教民主運動（KDH）創設に参加し、国民議会選挙で初当選。運輸郵政通信省の副大臣を務めました。1993年にはKDHの経済担当副代表に就任し、1994年のモラウチーク連立内閣では運輸郵政公共事業大臣を務めました。

1997年、民主スロバキア運動（HZDS）のメチアル政権に対抗するため、キリスト教民主運動など5党がスロバキア民主連立（SDK）を結成し、ズリンダはそのスポークスマンに就任。翌1998年にはSDKの党首に就任し、同年の国民議会選挙でSDKは第二党となり、民主左翼党など3党とともに連立内閣を組閣し、ズリンダは首相に就任しました。

2000年には、SDK所属議員と閣僚の一部が中心となり、自由主義経済を指向する中道右派政党、スロバキア民主キリスト教連合（SDKÚ）を結成。2002年の国民議会選挙でSDKÚは第二党となり、中道右派3党とともに第二次ズリンダ内閣を組閣しました。

2006年には民主党（DS）を吸収し、スロバキア民主キリスト教連合・民主党（SDKÚ-DS）を結成しましたが、同年の国民議会選挙でロベルト・フィツォ率いる方向・社会民主主義（SMER-SD）に敗れ、政権を維持できずに退陣しました。その後は国民議会の外務委員会委員を務めました。

2010年、自身の政治資金疑惑が発覚した責任を取り、国民議会選挙への立候補見送りと党首辞任を表明しましたが、選挙後に発足したイヴェタ・ラジチョヴァー政権で外務大臣に就任し、2012年まで在任しました。

経済自由化と欧州連合加盟

首相就任後、ズリンダはメチアル政権下で悪化した国家財政の再建と国内経済の自由化を目指し、国有会社の民営化など市場開放を積極的に推進しました。その結果、2000年12月には経済協力開発機構（OECD）に加盟し、2004年には北大西洋条約機構（NATO）と欧州連合（EU）への加盟を実現しました。

これらの政策により、スロバキア経済は欧米や韓国などからの投資が活発化し、年率6%という高い経済成長を達成しました。また、国の財政赤字もGDPの3％以下まで削減され、2009年のユーロ導入につながりました。

しかしその一方で、失業率が20％台まで上昇するなど、急速な経済改革は地方を中心に国民の不満を招き、2006年の国民議会選挙で方向・社会民主主義に敗北する一因となりました。

ズリンダの政治手腕は、スロバキアの国際社会への統合と経済発展に大きく貢献した一方で、国内の社会的な不均衡を生み出したという側面も持ち合わせています。

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