方向・社会民主主義

スロバキア中道左派政党、方向・社会民主主義（SMER-SD）の軌跡と現状

方向・社会民主主義（SMER-SD）は、スロバキアにおける主要な中道左派政党です。社会主義インターナショナルにも加盟しており、スロバキア政治において長年にわたって大きな影響力を持ってきました。本稿では、SMER-SDの設立から現在までの歩み、その政治的立場、支持基盤、そして2023年の選挙における動向について詳細に分析します。

設立と初期の展開

SMERは1999年、当時民主左翼党（SDĽ）の副党首であったロベルト・フィツォによって設立されました。フィツォは、当時のミクラーシュ・ズリンダ政権における自身の処遇への不満、および少数民族政党との連立への反発からSDĽを離党、新党を結成しました。当初は明確な経済政策を打ち出さず、既存勢力への批判を前面に押し出しながら、フィツォのカリスマ性と「第三の道」というキャッチフレーズを武器に支持基盤を拡大していきました。2002年の国民議会選挙では第三党となり、その後、中道左派路線へと政治的立場を明確化していきます。

社会民主主義路線への転換と政権獲得

2004年、SMERは複数の社会民主主義系政党を吸収合併し、党名を「SMER-SD」へと変更しました。社会民主主義路線を明確にしたことで、欧州社会党の加盟候補政党となり、国際的な連携を強化しました。2006年の国民議会選挙では第一党に躍進、フィツォが首相に就任しました。しかし、民族主義政党との連立は欧州社会党から加盟候補資格停止という事態を招くことにもなりました。

2010年の選挙でも第一党を維持しましたが、連立相手の敗北により単独過半数を獲得できず、野党に転落。しかし、2012年の繰り上げ選挙では単独過半数を獲得し、フィツォによる単独政権を樹立しました。その後も地方選挙で圧倒的な勝利を収めるなど、その勢力を維持し続けました。2016年の選挙では第一党の座を維持したものの、議席数を減らしました。

ジャーナリスト殺害事件と政権転落

2018年、政権幹部とマフィアの関係を追っていたジャーナリストの殺害事件が発生しました。この事件は大きな政治スキャンダルとなり、フィツォ首相は辞任に追い込まれ、SMER-SDの支持率は低下しました。2020年の国民議会選挙では第二党に転落、政権の座を失いました。

2023年選挙と親露政策

2023年の国民議会選挙では、ウクライナへの軍事支援停止などを訴えるSMER-SDは第一党に返り咲きました。しかし、ロシアによる選挙介入疑惑や、ウクライナ支援反対、対露制裁反対といった親露的な姿勢が大きな批判を呼びました。支持層には、社会主義時代を知る世代や左派勢力が多く、ロシアへの親近感を持つ層も一定数存在することが指摘されています。

まとめ

SMER-SDは、スロバキアの政治において長きに渡り重要な役割を果たしてきた政党です。カリスマ的指導者フィツォの存在、そして社会民主主義を基調とした政策によって支持を集めてきました。しかし、近年は汚職スキャンダルや親露的な姿勢が批判の的となっており、その将来は不透明です。今後の動向から目が離せません。

参考文献

* ポスト社会主義諸国の政党・選挙データベース作成研究会 編『CIAS Discussion Paper No.9 ポスト社会主義諸国　選挙･政党ハンドブックⅠ』（京都大学地域研究統合情報センター）

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