ミスティー (桜田淳子の曲)

ミスティー（桜田淳子）

1981年6月に発表された「ミスティー」は、歌手・桜田淳子さんの通算35枚目となるシングル楽曲です。アイドルとしての活動から、大人のアーティストへの移行期にあたる時期にリリースされました。

この楽曲は、桜田淳子さんの長い歌手キャリアにおいて、特筆すべき点があります。それは、現時点で彼女がオリコンシングルチャートにランクインさせた最後の楽曲となっている、という事実です。これは、当時の音楽シーンの変化や、桜田さん自身の活動の多様化といった背景を物語る記録と言えるでしょう。

楽曲の世界観を表現する上で、特に印象的な要素となったのが、ステージやテレビ番組で披露された鮮やかなピンクのレオタード衣装です。この斬新な衣装は、桜田さん自身がデザインに関わったことが知られています。彼女は、海外の人気アーティストであるオリビア・ニュートン＝ジョンが、自身のライブビデオの中で着用していたショッキングピンクの全身タイツ姿に強いインスピレーションを受けました。そのイメージを具体的にデザイナーに伝え、楽曲の持つ都会的で少しミステリアスな雰囲気に合わせた衣装として具現化させたのです。この衣装は、多くの視聴者に鮮烈な印象を与えました。

「ミスティー」のプロモーション戦略も、当時としては非常に意欲的なものでした。楽曲の発売月である1981年6月26日には、「淳子の電波ジャック・Misty Day」と名付けられた集中的なメディア露出企画が実行されました。この企画では、早朝のニュース・情報番組である日本テレビ系の『ズームイン!!朝!』への出演を皮切りに、同じく日本テレビ系の『お昼のワイドショー』やTBS系の『3時にあいましょう』といった午後のワイドショー番組、さらにはフジテレビ系の人気トーク番組『スター千一夜』、そして自身が主演を務めていたTBS系の連続ドラマ『玉ねぎむいたら…』など、多岐にわたるテレビ番組に、文字通り朝から晩まで登場しました。生放送番組だけでなく、既に収録済みの番組も含めて一日中テレビ画面に姿を見せるというこの試みは、楽曲のリリースを広く告知し、当時のメディアにおける桜田淳子さんの影響力の大きさを示すものでした。

また、「ミスティー」は、同時期にTBS系列で放送されていた桜田淳子さん主演のテレビドラマ『玉ねぎむいたら…』とも密接に連携していました。特に、ドラマの第16話の冒頭シーンでは、劇中の登場人物がテレビ画面を見ているという設定の中で、「ミスティー」のミュージックビデオが流れるという演出が取り入れられました。これにより、ドラマの視聴者層に対しても自然な形で楽曲がアピールされ、相乗効果を生み出すことに成功しました。

このシングルには、表題曲である「ミスティー」の他に、カップリング曲として「恋はSEE-SAW」が収録されています。「ミスティー」は、小林和子氏が作詞、小田裕一郎氏が作曲、そして大村雅朗氏が編曲を手掛けた楽曲で、演奏時間は3分42秒です。一方、カップリングの「恋はSEE-SAW」は、竜真子氏が作詞、林哲司氏が作曲、松井忠重氏が編曲を担当し、演奏時間は3分48秒となっています。どちらの楽曲も、当時のシティポップや歌謡曲のエッセンスを含んだサウンドを持っています。

関連情報としては、この楽曲は後年に発売されたベストアルバム『GOLDEN☆BEST 桜田淳子 コンプリート・シングル・コレクション』にも収められており、彼女のシングル作品群を網羅する上で欠かせない一曲となっています。また、「ミスティー」がリリースされた1981年は、日本の音楽シーンにおいて多様なサウンドが登場した年であり、この楽曲も当時の音楽状況を理解する上での一例として挙げられます。

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