ミズキンバイ

ミズキンバイ（水金梅、Ludwigia stipulacea）

ミズキンバイはアカバナ科に属する多年生草本で、主に水辺に生育します。この植物は、水中で育つための特性を持つ抽水性の植物であり、独特な生育の形態が見られます。

形態

他の植物とは異なり、ミズキンバイは地面を這うように広がる特性があります。その成長過程では、節から不定根を伸ばして体を固定し、呼吸根を形成してガスの交換を行います。茎は脆く、簡単に千切れることがあるため、千切れた部分が新しい個体として独立して成長します。このような無性生殖は、繁殖の効率を高めています。

生態

ミズキンバイは、河川の砂州や平地の水田といった、自然的または人為的な攪乱が起こりやすい環境を好む攪乱地依存の植物です。洪水や耕作などで周囲の植生が破壊され、陽光の当たる裸地が生じると、千切れたシュートや埋土種子が発芽し、急速に群落を拡大することができます。春から秋にかけて、ミズキンバイは黄色い5花弁の一日花を咲かせます。果実は蒴果であり、成熟しても果実が裂けることはなく、そのまま地面に落ちます。土壌に埋もれた後は数ヶ月かけて果皮が分解し、種子が散布されます。草丈は通常50〜60cmほどで、充分な日光が必要なため、高草植物に囲まれると生育が難しくなります。

分布

ミズキンバイは日本の千葉県、神奈川県、高知県、宮崎県の4県で確認されている珍しい種で、環境省のレッドデータブックではかつて絶滅危惧IA類に指定されましたが、2007年版では絶滅危惧II類に改定されました。この植物の分布の中心は中国であり、古代に水稲栽培とともに日本に伝わった帰化種とされています。

保全活動

唯一の都市河川である柏尾川では、大学、地域住民、行政の協力によりミズキンバイの保護活動が行われています。2006年から治水工事の一環として、柏尾川から金井遊水地へ一時的に移植されました。河川の管理作業の中で、その生育基盤の設置が進められ、2009年には元の河川へ全ての移植が無事終了しました。しかし、近くの工事現場での移植が成功せず、吉田大橋の下での個体は消滅してしまいました。

近縁種

日本にはミズキンバイに関連する近縁種がいくつか存在します。

• - チョウジタデ (L. epilobioides)
• - ヒレタゴボウ（アメリカミズキンバイ、L. decurrens）- 帰化植物
• - ミズユキノシタ (L. ovalis)

参考文献

• - 佐竹義輔ほか 『日本の野生植物 草本』 平凡社、2003年
• - 矢原徹一監修 『レッドデータプランツ』 山と渓谷社、2003年

ミズキンバイは、その独特な生態や生育様式から、湿地環境における重要な植物です。現存する数少ない群落を保護するため、今後も地域全体での取り組みが求められます。

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