ミツバツツジ

ミツバツツジ（三葉躑躅）

ミツバツツジ（学名: Rhododendron dilatatum）は、ツツジ科ツツジ属に分類される落葉性の低木です。この名称は、特定の種だけでなく、近縁のミツバツツジ類全体の総称としても用いられます。そのため、種としてのミツバツツジを指す場合は、ホンミツバツツジ（学名: Rhododendron dilatatum subsp. dilatatum var. dilatatum）という名称が提案されています。

ホンミツバツツジ（種としてのミツバツツジ）

分布と生育環境

ホンミツバツツジは、本州の関東地方、東海地方、近畿地方東部の太平洋側に分布しています。主に山地や丘陵の痩せた尾根や岩場、里山の雑木林などに生育しています。

形態

樹高は1〜3メートルで、樹皮は暗灰色で滑らかです。小枝は褐色で、輪生状に2〜4本出ます。名前の由来でもあるように、葉は3枚ずつ輪生するのが特徴です。若葉には腺毛があり粘り気がありますが、成葉になると無毛になります。

花

開花時期は4〜5月で、葉よりも先にピンク色の花を咲かせます。花冠は直径30〜40ミリメートルの漏斗型で、深く5つに裂けます。ミツバツツジ類の中で、雄しべが5本である点が大きな特徴です。雌しべは1本あります。山間部でピンク色の花を咲かせるツツジ類の中では、アカヤシオに次いで2番目に開花します。

その他

秋には紅[[葉]]し、くすんだ橙色や濃い赤色になります。枝先には冬芽がつき、多数の芽鱗に覆われています。花芽は長楕円形で葉芽よりも大きく、軟毛と腺点があり、やや粘り気があります。葉痕は半円形で、維管束痕が1つあります。果実には腺点があります。

似た種類のトウゴクミツバツツジは、花芽に腺点がないことで見分けられます。

利用

古くから庭木としても利用されていますが、常緑性のツツジよりもやや日陰を好みます。盗掘の影響もあり、野生の個体数は多くありません。

変種

ミツバツツジには、トサノミツバツツジ、ハヤトミツバツツジ、ヒダカミツバツツジなどの変種があります。変種も含めて、各花芽に2〜3輪の花が咲き、葉の下部は内側に巻き込むという特徴があります。

ミツバツツジ類

特徴

ミツバツツジ類は、ミツバツツジ節とも呼ばれ、3〜5月頃に紅紫色の美しい花を咲かせます。花が咲き終わってから葉が出てくるのが特徴です。枝先に3枚の葉がつくことから、この名前が付けられました。

分類

ミツバツツジ類は、類縁種や雑種が多く、分類が難しいグループです。2018年の研究では、21種、4亜種、19変種、さらに白花や八重咲きを含む品種が確認されています。品種を除いても、国内には44変種もの野生種が存在します。

その他のミツバツツジ類

亜高木で常緑、薄紅色の花を咲かせるサクラツツジ、花や葉が大きく朱色の花を咲かせるオン[[ツツジ]]、アマギツツジは、系統的にはミツバツツジ類に分類されますが、一般的なミツバツツジ類とは区別されることが多いです。

日本に自生するその他のミツバツツジ類には、トウゴクミツバツツジ、サイゴクミツバツツジ、コバノミツバ[[ツツジ]]、ダイセンミツバツツジ、ユキグニミツバツツジ、ツルギミツバツツジ、キヨスミミツバツツジ、ヒュウガミツバツツジなどがあります。

分布と識別

北海道や本州では、分布によって比較的識別が容易ですが、四国や九州では専門書や論文を参考にしないと、種の同定が難しいとされています。

ミツバツツジ類を観賞できる植物園

多くのミツバツツジ類が展示されている植物園としては、新潟県立植物園、福井総合植物園プラントピア、国立科学博物館筑波実験植物園、国営武蔵丘陵森林公園、小石川植物園、岩本山公園、豊橋総合動植物公園、神戸市立森林植物園、高知県立牧野植物園などがあります。しかし、これらの植物園でも樹名板が散逸したり、担当者の退任によって樹種が判別できなくなっている場合があります。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年。
学習研究社（編）『日本の樹木』〈増補改訂ベストフィールド図鑑〉、学習研究社、2009年。
林将之『紅[[葉]]ハンドブック』文一総合出版、2008年。
南谷忠志、門田裕一、米倉浩司「日本産ミツバツツジ類（ツツジ科）の分類（1）」『植物研究雑誌』第93巻第2号、2018年。
南谷忠志、門田裕一、米倉浩司「日本産ミツバツツジ類（ツツジ科）の分類（2）」『植物研究雑誌』第94巻第4号、2019年。
松倉一夫『葉・花・実・樹皮で見分ける! 樹木観察ハンドブック山歩き編』JTBパブリッシング、2009年。
渡辺洋一、高橋修『ツツジ・シャクナゲハンドブック』文一総合出版、2018年。
大橋広好、門田裕一、木原浩、邑田仁、米倉浩司『改訂新版日本の野生植物』平凡社〈4〉、2017年。

外部リンク

* ミツバツツジ - コトバンク

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