ミツユビカモメ属

ミツユビカモメ属（学名 Rissa）は、鳥類の中でもチドリ目に属し、カモメ科に含まれる海鳥のグループです。この属の基準となる種、すなわち模式種はミツユビカモメ（Rissa tridactyla）です。

これらの海鳥は、主に北半球の高緯度海域に広く分布しています。具体的には、北大西洋、北太平洋、遠くは地中海、そして極地に近い北極海といった、冷たい海域の外洋や、それに面した厳しい断崖などが連なる海岸線を生息域としています。

ミツユビカモメ属の鳥は、全長およそ35センチメートルから40センチメートル程度で、カモメとしては中型の部類に入ります。全身は基本的に明るい白色の羽毛に覆われていますが、背中から翼の大部分にかけては、わずかに青みを帯びた上品な灰色を呈しています。翼の先端にある最も長い羽、初列風切羽の先端部分は際立った黒色をしており、飛翔時にはこれがよく目立ちます。尾羽は純白色で、中央部分が浅く、わずかに二股に切れ込んでいるのが特徴です。嘴は鮮やかな黄色をしており、彼らの白い体色によく映えます。脚は比較的短く、彼らが陸上を歩く姿はあまり見られません。この属の最も独特な形態は、足にあります。後趾（人間の親指にあたる第一趾）が非常に小さく、ほとんど痕跡的であるため、一見すると足の趾が三本しかないように見えます。この特徴が、和名「ミツユビカモメ（三趾鴎）」の由来となっています。羽の色合いは季節によって変化します。夏季の繁殖期には、頭部全体が真っ白ですが、冬季になると、後頭部に黒い斑紋が現れ、識別点となります。

現在、ミツユビカモメ属には主に二つの種が認められています。広く分布しているのがミツユビカモメ（Rissa tridactyla）で、その名の通り典型的な形態を持ちます。もう一つは、アリューシャン列島周辺など限られた地域に分布するアカアシミツユビカモメ（Rissa brevirostris）です。この種は、通常黒い後肢が鮮やかな赤色である点でミツユビカモメと明確に区別できます。

ミツユビカモメ属の鳥類は、一年を通して外洋や荒々しい海岸線で生活する典型的な海鳥です。彼らの食性は動物食であり、主に海中の小魚類や、イカやタコといった軟体動物を主な餌としています。獲物を捕らえる際には、空から海上を見つけ、海面に降りて浮かびながら頭部を水中に突っ込んで獲物を探します。場合によっては、短時間ながら潜水して水中の獲物を追いかけることもあります。繁殖期になると、彼らは驚くほど大規模な集団繁殖地、いわゆるコロニーを形成します。これらのコロニーは、外敵が近づきにくい険しい断崖絶壁や孤島の岸壁などに作られることがほとんどです。巣は、地上の鳥のように小枝を組むのではなく、断崖の僅かな岩棚などに、土や枯れ草、海藻などを集めて固め、中央が窪んだ皿状に作られます。一回の繁殖シーズンに産む卵の数は、通常2個から3個です。集団で繁殖することで、外敵に対する防御や情報交換などの利点があると考えられています。

この属の学名「Rissa」は、彼らの鳴き声を表すとも言われる、アイスランド語でミツユビカモメを指す伝統的な呼称「rita」に由来すると言われています。人間活動との関連では、特にアカアシミツユビカモメの保全状況が近年懸念されています。この種は、人間による大規模な漁業活動と、餌となる魚類資源を巡って競合関係にあります。漁獲量の増加に伴い、彼らの主要な獲物が減少することで、十分に餌を得られず、結果として一回の繁殖で産む卵の数が減ったり、雛が生き残る確率が低下したりするなど、繁殖率が著しく低下しています。これにより、アカアシミツユビカモメの個体数は減少傾向にあり、今後の保護対策が求められています。

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