ミドリ十字

株式会社ミドリ十字の解説

株式会社ミドリ十字（GREEN CROSS CORPORATION）は、かつて存在した日本の大手医薬品メーカーです。1950年に「株式会社日本ブラッドバンク」として創業し、輸血用血液の売買を主業務としていました。その後、血液製剤や医薬品の製造販売に事業を転換しましたが、薬害エイズ事件により経営が悪化、最終的に他社との合併によりその歴史を閉じました。

創業と事業の変遷

ミドリ十字の前身である日本ブラッドバンクは、1950年11月20日に元陸軍軍医中佐の内藤良一によって設立されました。当初は、大阪と神戸に採血プラントを設け、輸血用血液の売買を行っていました。創業時の役員には、731部隊に関わりのあった人物が名を連ねていました。

1964年、血液銀行の業務を日本赤十字社に一本化する政府の方針を受け、ミドリ十字は血液を原料とした医薬品メーカーへと転換しました。この時、社章が「緑十字形」であったことから、社名を「株式会社ミドリ十字」に変更しました。

韓国のGREEN CROSSとの関係

韓国にも「GREEN CROSS」という同名の企業が存在しますが、ミドリ十字とは直接的な関係はありません。ただし、両社とも「緑十字に白抜き」の社章を使用しており、事業内容も類似している点が見られます。

薬害エイズ事件とその後

1980年代後半に発覚した薬害エイズ事件は、ミドリ十字の経営に深刻な影響を与えました。同社が製造販売した非加熱血液凝固因子製剤が、多くのHIV感染者を生み出したことが原因です。この事件により、ミドリ十字の経営陣が業務上過失致死罪で逮捕・起訴され、実刑判決が下されました。

薬害エイズ事件の影響で業績が悪化したミドリ十字は、1998年に吉富製薬と合併しました。この合併は、実質的にはミドリ十字の救済合併であり、これにより同社は法人格を消滅させました。その後、吉富製薬は社名を変更し、さらに三菱東京製薬と合併を経て、現在の田辺三菱製薬へと繋がっています。

一方で、ミドリ十字の血漿分画製剤部門は日本赤十字社に買収され、その後、三菱ウェルファーマから分割された株式会社ベネシスと統合し、現在の日本血液製剤機構となっています。

主な製品

ミドリ十字は、以下のような血液製剤や医薬品を製造販売していました。

プラスマネート
クリスマシン
セファロチンナトリウム注
ヴェノグロブリン
ヒストブリン
トリコシード錠
コーナイン
AHF
サヴィオゾール
ウロキナーゼ
NAPP錠
COPP
コンコエイト
ヤギフラキシン錠
カシワドール
フィブリノーゲン-ミドリ
フルオゾール
HIPROKIE36

その他の出来事

1957年には大阪証券取引所に上場、1960年には東京証券取引所にも上場を果たしました。
1982年には創業者の内藤良一が急死し、その後、厚生省出身の官僚が経営に深く関与するようになりました。
1989年には放射線検査薬の無許可輸入販売が発覚し、社会問題となりました。

関連会社

ミドリ十字は、国内外に多数の関連会社を有していました。これらの会社は、医薬品の製造販売や研究開発など、様々な事業を展開していました。

福島ミドリ十字
愛知ミドリ十字
山陰ブラット商会
岡山ミドリ
伊庭屋薬品
シーアイエスダイアグノスティック
大阪ミドリ十字
アルファ・テラピューティック・コーポレーション
アルファ・テラピゥティク・タイランド Ltd.
アルファ・テラピゥティク・アジア Pte Ltd.
エイパム
国際試薬
バイファ
台湾緑十字公司
廣州緑十字薬業有限公司
カレックス
ミドリ・ファーメリカ・コーポレーション
* ウェルファイド コリア

薬害肝炎問題

ミドリ十字が製造販売したフィブリノゲン製剤や非加熱血液凝固第Ⅸ因子製剤により、多くの人々がC型肝炎に感染しました。この問題は、薬害エイズ事件と並び、同社の責任が問われる深刻な問題となりました。

まとめ

株式会社ミドリ十字は、血液銀行として誕生し、医薬品メーカーとして成長しましたが、薬害エイズ事件と薬害肝炎問題により、その歴史に幕を閉じました。同社の歴史は、日本の医薬品業界における負の側面を示す出来事として、深く記憶されるべきでしょう。

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