日本ブラッドバンク

株式会社日本ブラッドバンク

株式会社日本ブラッドバンクは、1950年に設立された日本の大手医薬品メーカーです。そのルーツは、戦後間もない時期に、元陸軍軍医中佐の内藤良一氏の発案に端を発します。神戸銀行（現在の三井住友銀行）の出資を得て、大阪市城東区に本社を構え、血液製剤の製造・販売を開始しました。創業当初は、「乾燥人血漿」「血液型判定用血清」「クエン酸塩加人全血液（保存血液）」の3品目を主力製品としていました。

血液事業の展開

血液事業の拠点として、本社内に「大阪プラント」、神戸市に「神戸プラント」を設置し、採血業務を開始しました。1日平均500人の採血者から、1ヶ月で1万5,000人、3,000リットルの採血量を目標とし、大阪、神戸を中心に、京都、岡山など近畿地方を中心とした地域で営業活動を展開しました。

社名変更と変遷

1964年、同社は「株式会社ミドリ十字」へと社名を変更します。この社名変更は、後に薬害エイズ事件を引き起こすこととなり、同社の歴史において重要な転換点となりました。その後、企業は吉富製薬株式会社、ウェルファイド株式会社、三菱ウェルファーマ株式会社と変遷を重ね、現在は田辺三菱製薬株式会社として事業を継続しています。しかし、企業母体は一貫して日本ブラッドバンクから続いています。

沿革

設立と初期の展開

1950年11月20日: 株式会社日本ブラッドバンク設立、大阪市に本社と工場を開設。
1951年4月: 塩野義製薬と「乾燥人血漿」「血液型判定用血清」の販売契約を締結。警察予備隊（現在の自衛隊）への販売を強化し、需要を拡大。
1952年1月: アジアチック商事（USA）と「乾燥人血漿」「クエン酸塩加人全血液」の販売契約を締結。

経営再建と製品開発

1952年: 経営再建計画を策定し、生産ラインの修繕、凍結真空乾燥装置の改良を実施。電力危機解消のためA級線を引き込み。
1953年5月: カッター社（現バイエル薬品）より「凍結血漿」500リットルの試験発注を受け、後に大量発注に繋がる。
米国でのグロブリンが小児麻痺予防に有効と考えられていたが、ワクチン開発により需要は激減した。
1953年: 保存血液を「銀行血-B Bank」と総称。
1953年: 麻疹予防・治療に有効な「グロブリン-B Bank」開発に着手。純度65%の『γ-グロブリン』が完成（1954年2月26日製造認可）。
「東京出張所」開設。

事業拡大と多角化

1954年: 名糖産業と血漿増量剤「デキストラン」を共同開発。「デキストラン・名糖・B Bank」販売開始。
1954年: 半期決算で3,245万円の純利益を計上。
1954年: 名古屋プラント・名古屋支店、福岡出張所を開設。東京出張所を東京支店に昇格。
1955年: 清瀬、東北、岡山、長岡の各出張所、高松営業所、東京プラントを開設。
1956年: 北海道出張所、筑豊営業所、京都プラントを開設。
1957年: 京都支店を開設。「大阪証券取引所」に株式上場。
1958年: 豪雪地帯に血液配送車を配備。小倉プラント開設。「神戸証券取引所」に株式上場。カッター社との合弁会社設立。塩野義製薬との販売契約解消。
1959年: 「福岡証券取引所」に株式上場。東北出張所を東北支店に昇格。大阪プラントを開設。「名古屋証券取引所」に株式上場。「コンドロイチン」発売。「一般用[[医薬品]]」販売開始。
1960年: 「新潟証券取引所」に株式上場。「カシロドール」発売。国際輸血学会で保存血の多量使用が肝炎の原因になると指摘され、血液銀行の在り方が批判された。「東京証券取引所」に株式上場。「パパイン」発売。
1961年: 「ネフラージン」発売。
1962年: 米アボット・ラボラトリーズと技術提携。「京都証券取引所」に株式上場。
1963年: 「プラスマネート」「マクロデックス」「レオマクロデックス」発売。

血液事業の終焉と社名変更

1964年8月: 厚生省が保存血の取り扱いを日赤と地方自治体に限定する方針を発表。
1964年8月28日: 血液銀行部門を廃止し、医薬品部門に特化。社名を「株式会社ミドリ十字」に変更。

主要製品

銀行血（B Bank）： 日本初の血液銀行システムによる保存血液。クエン酸塩溶液で血液凝固を防止。
ABO式血液型判定用血清（血液型判定用血清・乾燥-B Bank）：血液型判定に使用する血清。
乾燥人血漿（PLASMA-B Bank）：血漿成分を真空乾燥し、肝炎ウイルスの処理をした製剤。
グロブリン（グロブリン-B Bank）：はしかの予防・治療に使用された血漿分画製剤。
デキストラン（デキストラン40注-B Bank ・10% 500ml×10V デキストラン70注-B Bank ・6% 500ml×10V）：血漿増量剤。デキストラン40は血流改善剤、デキストラン70は血漿増量剤。
コンドロイチン（コンドロイチン注-B Bank）：軟骨から抽出したコンドロイチン硫酸を主成分とする製剤。
プラスマネート（プラスマネート-B Bank）：血漿蛋白補給剤。血清肝炎の危険性を除去。
アルブミン（アルブミン-B Bank）：低蛋白血症の治療に使用される人血清アルブミン製剤。
COPP (COPP-B Bank)：癌細胞に選択的に取り込まれるプロトポルフィリンを主成分とした制癌剤。
フィブリノゲン（フィブリノゲン-B Bank）：低フィブリノゲン血症治療薬。

事業所

本社

大阪府大阪市に所在。総務部、経理部、開発部、学術部、営業部、研究部、試薬事業部を擁していました。

支社・支店

東京、名古屋、京都、神戸、九州、東北に支社・支店を展開していました。

営業所・出張所・工場

新潟、長岡、北海道、高松に営業所や出張所を設け、都島工場は1999年まで稼働していました。

脚注

関連項目

日本の企業一覧 (医薬品)
血液銀行
薬害エイズ事件
田辺三菱製薬株式会社
田辺製薬株式会社
三菱ウェルファーマ株式会社
三菱化学株式会社 医薬カンパニー
東京田辺製薬株式会社
株式会社ミドリ十字
吉富製薬株式会社
三菱東京製薬株式会社
* ウェルファイド株式会社


株式会社日本ブラッドバンクは、血液製剤の製造・販売を通じて、日本の医療に大きく貢献しました。しかし、その歴史は、薬害エイズ事件という悲劇も内包しています。この教訓を忘れることなく、同社の歴史を振り返ることが重要です。

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