ミニ・リサーチ・モジュール2

ミニ・リサーチ・モジュール2（MRM2）

国際宇宙ステーション（ISS）を構成する重要な要素の一つに、ミニ・リサーチ・モジュール2（MRM2）があります。これはISSのロシア区画に位置し、ロシア語では「Малый исследовательский модуль 2（МИМ 2）」と表記されます。親しみやすい愛称として「ポイスク」（Поиск、ロシア語で「探索」を意味します）と呼ばれています。MRM2は、その構造と機能において、既にISSに設置されていたピアース・ドッキングコンパートメント（DC-1）と多くの共通点を持っています。本来の正式名称は「ドッキング区画2（Stykovochniy Otsek 2, SO-2）」でした。特筆すべきは、MRM2が2001年以降、ロシアがISSに新たに設置した最初の主要なモジュールであるという点です。

機能と運用

MRM2は2009年11月12日、ISSのズヴェズダモジュール上部に結合されました。これにより、ソユーズ宇宙船やプログレス補給船がISSにドッキングするための新しいポートが提供されました。また、宇宙飛行士が船外活動（EVA）を行う際のエアロックとしても使用可能です。2021年に多目的実験モジュール「ナウカ」が結合されたことに伴い、それまでロシアの主要エアロックであったピアースが軌道から離脱・廃棄されたため、MRM2がロシア区画の主要なエアロックとしての役割を担うことになりました。

さらに、MRM2は科学実験のための内部空間を提供するだけでなく、ロシア科学アカデミーが開発した船外実験装置を設置するためのインターフェースを2箇所備えています。これらのインターフェースは、実験装置へ電力供給を行い、同時に取得した実験データの送受信を可能にしています。

ISSへの結合準備と打上げ

MRM2のISSへの結合に先立ち、2009年6月にはISS搭乗クルーによる2回の船外活動が行われ、モジュールの受け入れ準備が進められました。

ロシアEVA-22（2009年6月5日）：第19次・第20次長期滞在の指揮官であったゲナディ・パダルカ飛行士と飛行機関士マイケル・バラット飛行士は、ロシア製のオーラン宇宙服を着用し、ズヴェズダモジュールの外部にMRM2のドッキングに必要なクルスドッキングシステムのアンテナ2基、ドッキングターゲット、および電気配線の接続器を取り付ける作業を成功させました。
ロシアEVA-23（2009年6月10日）：再びパダルカ飛行士とバラット飛行士は船外活動を実施。MRM2がズヴェズダの前方区画にドッキングできるよう、それまで設置されていた平面状のハッチカバーを、MRM2の構造に適した円錐形のドッキングカバーに交換しました。

MRM2結合後も、2010年1月14日にはオレッグ・コトフ飛行士とマクシム・スラエフ飛行士が船外活動を行い、ソユーズやプログレスのドッキングを円滑に行うための最終準備を実施しました。この活動では、アンテナやドッキングターゲットの展開、手すりの設置、そしてMRM2のクルスアンテナをドッキングシステムの回路に接続する作業が行われ、約5時間44分で完了しました。

MRM2の設計と製作は、国際宇宙ステーションのロシア区画の開発・運用を担う主要企業であるS.P.コロリョフ社が担当しました。

モジュールは、プログレス補給船を改造した無人宇宙船「プログレスM-MRM2」に結合された状態で、2009年11月10日午後2時22分（GMT）にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からソユーズ-Uロケットで打ち上げられました。これは、多岐にわたる形態で運用されてきたソユーズロケットにとって、記念すべき1750回目の飛行となりました。NASAの報告によると、プログレスM-MRM2はオーラン宇宙服、生命維持装置、医療・衛生機器など、合計約1,800ポンド（約815.4kg）の物資を搭載してISSへ運びました。

2日間の飛行を経て、プログレスM-MRM2は自動操縦システムであるクルスを用いてISSに接近し、2009年11月12日15時41分（UTC）、カザフスタン上空約350kmで、ズヴェズダモジュールの上部ドッキングポートに無事ドッキングしました。ドッキングの翌日、11月13日12時17分（UTC）には、マクシム・スラエフ飛行士とロマン・ロマネンコ飛行士がハッチを開け、MRM2内に初めて入室しました。MRM2の運搬役を終えたプログレス補給船は、12月8日にISSから切り離され、大気圏再突入により役目を終えました。

MRM2の初使用

MRM2がドッキングポートとして初めて使用されたのは、2010年1月21日の出来事です。当時ISSに滞在していたマクシム・スラエフ飛行士と、第22次長期滞在のコマンダーであったジェフリー・ウィリアムズ飛行士は、ソユーズTMA-16宇宙船をズヴェズダモジュールの後部ドッキングポートからMRM2の上部ドッキングポートへ移動させる作業を行いました。ソユーズTMA-16は、ISSがアフリカ南西海岸上空約340kmを通過中の午前10時03分（UTC）にズヴェズダ後部から分離。スラエフ飛行士がソユーズの小型操縦スラスタを巧みに操作し、ISSから約30メートル離れた位置から再度接近、午前10時24分（UTC）にMRM2へのドッキングを成功させました。

特記事項

MRM2の運用初期には、予期せぬ事態も発生しました。2009年11月20日午前1時36分（UTC）、そして翌21日午前2時53分（UTC）に、ISSに滞在していた飛行士たちは突然鳴り響いた警報音によって起こされました。これは急減圧を示す誤った警告であり、ISS内の換気ファンが自動停止したことで船内に塵が舞い上がり、ヨーロッパ宇宙機関（ESA）のコロンバス実験室の煙探知機が誤作動するという連鎖的な問題を引き起こしました。ヒューストンの管制官からは、この誤警報の原因がMRM2にある可能性が示唆されました。

MRM2は、その多機能性により、ISSのロシア区画におけるドッキング、船外活動、そして科学研究の重要な基盤となっています。

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