ミノタウロスV

ミノタウロスV (Minotaur V) について

米国で開発された使い捨て型の宇宙ロケット「ミノタウロスV」は、防衛関連企業オービタル・サイエンシズ（現ノースロップ・グラマン）によって開発されました。これは、先行するミノタウロスIVの性能向上型であり、その技術的基盤は冷戦期の大陸間弾道ミサイル（ICBM）、ピースキーパーに由来します。軍事技術を民生利用するPeacekeeper SLV計画の一環として誕生したミノタウロスシリーズの中で、ミノタウロスVは高エネルギー軌道への投入能力を高めたモデルです。

機体構成

ミノタウロスVは特徴的な5段構成を持ちます。これは、基盤となるミノタウロスIV+に、第5段として「スター37 (Star 37)」固体ロケットモーターを追加することで実現されました。スター37には2つの派生型があり、一つはスピン安定型の「スター37FM」、もう一つは精密な姿勢制御が可能な3軸安定型の「スター37FMV」です。ミッションに応じて最適なタイプが選択されます。

性能

5段構成により、ミノタウロスVは高軌道や惑星間軌道へ比較的重いペイロードを投入できます。静止トランスファ軌道（GTO）へは約640kg、月遷移軌道（TLI）へは最大約447kgのペイロード投入能力を持つよう設計されています。この月遷移軌道への能力は、月探査ミッションなどに有効です。

運用実績

ミノタウロスVの初飛行は2013年9月7日です。この際、NASAの月探査機LADEEが搭載されました。LADEEは月の環境調査を目的とし、ミノタウロスVはこの探査機を月遷移軌道へ成功裏に投入しました。これにより、月ミッションへの対応能力を示しました。

射場

利用可能な候補射場は、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地LC-8、バージニア州の中部大西洋地域宇宙基地（MARS）Pad 0B、アラスカ州のコディアック打上げ基地Pad 1です。ただし、開発中の2009年時点では、中部大西洋地域宇宙基地以外からの打ち上げ予定は具体化されていませんでした。これは、ミッションの軌道特性に最適な射場が選ばれるためです。MARSは東方向や南東方向への打ち上げに適し、高軌道や月軌道への打ち上げに地理的優位性があります。

特筆事項

ミノタウロスVを含むミノタウロスシリーズは、ICBM技術の民生転用の好例です。既存技術の再活用により、開発コストや製造コストを抑えつつ、信頼性の高いロケットシステムを構築しています。使い捨て型ではありますが、小型衛星や特定の高軌道への迅速な投入といったニッチ市場で重要な役割を担います。特に月遷移軌道への投入能力は、科学探査ミッションにとって重要な選択肢となり得ます。

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