ミノル (イギリスの競走馬)

ミノル（Minoru、1906年-1917年？）は、輝かしい戦績を残したアイルランド産のサラブレッド競走馬、そして種牡馬です。

そのキャリアは、アイルランドのキルデアにある牧場での誕生から始まりました。所有者はウィリアム・ホール・ウォーカー大佐（後の第1代ウェヴァツリー男爵）で、現在のアイリッシュ・ナショナルスタッドにあたる場所です。その後、イギリス国王エドワード7世がウォーカー大佐からミノルを含む6頭を借り受け、国王の所有馬として競走生活を送ることになります。調教師はリチャード・マーシュ氏でした。

ミノルという名前の由来は日本人に因むとされ、2つの説が存在します。1つは、ウォーカー大佐が牧場に日本庭園を造営した際に招いた日本人、飯田三郎氏の子息であるという説。もう1つは、1902年に100メートル走で好記録を出したとされる東京帝国大学の学生、藤井實氏に由来するという説です。アイリッシュ・ナショナルスタッドの公式サイトでは以前、飯田氏説を記載していました。また、カナダのミノルパークに建立されたミノルの銅像除幕式には、飯田氏の息子であるブライアン氏が招かれています。

2歳となった1908年、ミノルはエプソム競馬場でデビュー。初戦を勝利で飾りましたが、その後は2着、3着が続き、クラシックレースへの出走は難しいと見られていました。しかし、翌年のグリーナムステークスで圧勝すると、マーシュ調教師は考えを改め、2000ギニーへの出走を決断します。

2000ギニーでは、2歳時に7連勝を達成していたバヤルドが本命視されましたが、冬場の体調不良から4着に敗退。対照的に絶好調だったミノルは、2着馬に2馬身差をつけて優勝、クラシックへの道を切り開きました。

ダービーステークスでは、ミノルはバヤルドを上回る人気を集めましたが、1番人気はアメリカからの移籍馬サーマーティンでした。しかし、レース中にサーマーティンが転倒。その影響を受けずにミノルはレースを続け、2着馬をアタマ差で退け、ダービーステークスも制覇しました。

その後、セントジェームズパレスステークス、サセックスステークスでも勝利を収めたミノルでしたが、三冠最終戦のセントレジャーステークスでは距離が長く、バヤルドに優勝を譲り着外に終わりました。

4歳時のシティ&サバーバンハンデキャップに出走したものの、着外に終わり、その後エドワード7世の崩御により賃貸契約が終了。ミノルの競走馬生活は幕を閉じました。

引退後は故郷の牧場で種牡馬となりました。1913年には、同じくダービー馬であるアボイェールと共にロシア帝国に贈られました。しかし、1917年のロシア革命により、ミノルとアボイェールのその後は不明です。処刑されたという説や、モスクワで馬車馬として使役されたという噂、イギリス軍の保護でセルビアに移送されたという噂など、様々な憶測が飛び交っています。

ミノルの血統は、1913年生の牝馬シリニッシマを通じて現代に受け継がれています。シリニッシマ自身は競走馬として目覚ましい活躍はしませんでしたが、繁殖牝馬として優れた能力を発揮。シリーン、トランクィル、ボスワースといった名馬を輩出し、その子孫は現在も活躍しています。ミノル自身の種牡馬としての直系の子孫は残っていませんが、シリニッシマの牝系を通じてその血統は生き続けているのです。

ミノルはカナダのブリティッシュコロンビア州リッチモンドにあったミノル競馬場の名前の由来にもなっています。ダービー優勝と同じ年に建設された同競馬場は廃止され、現在は陸上競技用トラックとなっていますが、ミノルパーク、ミノル大通りなどの地名としてその名は現在も残っています。2009年にはミノルの銅像がミノルパークに建立されました。

日本にも、1969年の東京優駿（日本ダービー）で2着となった同名の競走馬がいました。

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