ミハイル・ボロディン

ミハイル・マルコヴィチ・ボロディン：コミンテルンの工作員として生きた波乱の生涯

ミハイル・マルコヴィチ・ボロディン（1884年7月9日 - 1951年5月29日）は、ロシアのコミンテルン工作員であり、本姓はグルーゼンベルグと言います。帝政ロシア（現ベラルーシ）の出身で、激動の20世紀前半に世界各地で諜報活動に従事しました。

若き革命家

1903年、ボロディンはロシア社会民主労働党（ボルシェビキ）に入党し、革命運動に身を投じます。スイスでの亡命生活、リガでの地下活動を経て、1906年末にはイギリスへ移民。その後、アメリカ合衆国で生活し、大学で学びました。1917年のロシア革命後、帰国し外交関係部門で働き始め、コミンテルンの工作員としてメキシコ、アメリカ、イギリスで活動しました。イギリスでは逮捕され、国外追放処分を受けています。

中国国民党への影響工作

1923年から1927年、ボロディンは中国に派遣され、広東の中国国民党政府に対するコミンテルンとソ連の代表として活動します。孫文の主要な政治顧問となり、国民党をマルクス・レーニン主義の方向へと導きました。共産主義者の入党を認めさせ、黄埔軍官学校の設立にも関与。同時に、広東における反英運動を組織・指導しました。しかし、モスクワは彼の活動を秘密裏に進め、ボロディンとソ連政府との関係を否定していました。

ソ連拠点の強制捜査と失脚

1927年4月、南京事件をきっかけに列強がソ連への警戒を強める中、北京のソ連大使館が捜索され、ボロディンの活動が明るみに出ます。蔣介石による上海クーデターも起こり、共産主義者は追放され、ボロディンも逮捕の危機に晒されました。イギリスもアルコス事件を機にソ連と国交を断絶。同年7月、武漢国民政府も共産党との連携を解消し、ボロディディンは中国を去りソ連へ帰国しました。

晩年と名誉回復

帰国後、ボロディンは労働人民委員代理、モスクワ・ニュース編集者、タス通信副局長などを歴任。『ソヴインフォルムビューロー』編集長として情報戦を指揮しました。しかし、ユダヤ人であったことが災いし、1949年に「ソ連の敵」として逮捕され、シベリアの強制収容所で亡くなりました。死後、名誉回復されています。

家族

妻のファイナ・ボロディナも、北京で張作霖当局に逮捕されましたが、裁判で無罪となりソ連へ帰国しています。息子のノルマンはジャーナリストとして活動しました。

ミハイル・マルコヴィチ・ボロディンの生涯は、コミンテルンの活動家として、激動の時代を駆け抜けた波乱に満ちたものでした。

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