ミミモチシダ

ミミモチシダについて

ミミモチシダ（Acrostichum aureum L.）は、イノモトソウ科の多年生草本に属するシダ植物で、主に熱帯地域に分布しています。この植物は特にマングローブの湿地に多く見られ、外見は大柄で、特徴的な小葉を持つことが知られています。全体として高さは最大で3メートルにも達し、長い葉柄を持ちながらも、葉全体の中ではそれほど大きな面積を占めません。どのように生育しているか、詳しく見ていきましょう。

特徴

このシダの根茎は塊状で、大きな鱗片が付着しています。葉は立った形状を取り、単羽状複葉で細長い小判形の裂片を多数持ち、全体は挟長楕円形のような印象を与えます。葉片の裂片には短い柄があり、それぞれの長さは30-50cm、幅は4-8cm程度です。全体の葉は非常に硬く、革質で、他の熱帯系植物に見られるような葉の広がりがあり、特にソテツ類に似た印象を受けることがあります。胞子嚢群は葉身の先端側の裂片に形成され、その裏側全体に分布しています。

名称の由来

ミミモチシダの名称について、耳状を意味するのは一般的には丸く突き出した部分を指す場合が多いですが、実際にはこの植物にはそのような部分が見られません。この名前の由来には、学名の誤読が含まれています。種小名の aureum は「黄金色の」という意味で、若い胞子嚢群が葉裏に黄色い色合いを持つことから名付けられましたが、これを誤って「耳片のある」と解釈されたようです。

生育環境

ミミモチシダは、主に湿地に自生しており、特にマングローブ林の湿地に大規模な群落を形成します。根元は常に湿った泥の中にあり、水に浸かっている場合も多いです。この種は、マングローブに特化したシダ植物であり、その圧倒的な生育環境に特異性を持っています。また、マングローブの奥側の湿地にも見られることがあります。

分布

このシダ植物は世界の熱帯地区で広く分布しており、日本国内では琉球列島の八重山諸島に特有の生育地が確認されています。具体的には、石垣島、西表島、与那国島に存在が見られますが、台湾には生息していません。

近縁種

ミミモチシダ属には他に3種程度が存在しますが、特に日本国内ではこの種が最も知られており、大きさや姿においては他の種類と混同することはありません。

保護と利用

日本においては実質的な利用例はほとんどありませんが、その分布域が限られていることや珍しい特徴を持つことから、保護の対象となっています。しかし、平地に生育しているため開発の影響を受けやすく、特に石垣島の名蔵アンパルや、西表島の国指定天然記念物群落などがその例です。与那国島においても久部良ミトゥ湿地の群落が町の天然記念物に指定されており、すべての生育地は狭いながらも健全な生態系が維持されています。

産地の状況

西表島の生育地は島の周遊道路の近くに位置し、観察が容易ですが、近づくことは簡単ではありません。周囲には農地もあり、農業からの排水工事が生育環境に与える影響について懸念が高まっています。このような背景から、ミミモチシダの保護とその生育環境の維持が求められています。

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