ミヤマヨメナ

ミヤマヨメナ（深山嫁菜）とは

ミヤマヨメナ（学名：Aster savatieri）は、キク科シオン属に分類される多年生の草本植物です。春に開花する数少ない野菊の一つであり、その清楚な姿は多くの人々に親しまれています。

特に、園芸植物として有名なミヤコワスレは、このミヤマヨメナの園芸品種です。ミヤマヨメナは、野山にひっそりと咲く可憐な花ですが、ミヤコワスレを通して、より多くの人にその存在が知られています。

特徴

ミヤマヨメナは、地下茎を伸ばして繁殖する多年草です。地上の茎は直立し、高さ20〜50cm程度になります。根元から生える葉（根出葉）はロゼット状に広がり、開花時期にも残っています。

葉の形は長楕円形または卵状楕円形で、長さ3.5〜6cm、幅2.5〜3cm程度です。葉の先端はやや尖り、縁には粗い鋸歯があります。葉質は柔らかく、両面に細かい毛が生えています。

花期は5〜6月で、茎の先端に単独で花を咲かせます。花は、淡い青紫色の舌状花と、中心部の黄色の筒状花からなり、直径3.5〜4cm程度です。舌状花は、時に白っぽくなることもあります。総苞は半球形で、長さ約6mm、総苞片は2列に並び、先端が尖っていて縁に細かい毛があります。

種子（痩果）は倒卵状長楕円形で、少し扁平になっており、冠毛はありません。

和名の「ミヤマヨメナ（深山嫁菜）」は、深山に生えるヨメナという意味に由来します。また、別名の「ノシュンギク（野春菊）」は、野菊としては珍しく春に咲くことに由来します。

種小名の savatieri は、フランスの植物学者サヴァティエ（P.A.Savatier）にちなんで名付けられました。

分布と生育環境

ミヤマヨメナは、本州から九州にかけて分布し、温帯下部の山地に自生します。特に、木陰などのやや湿った場所に生育します。

分類

ミヤマヨメナは、かつては種子の冠毛がないことから、シオン属とは区別され、ミヤマヨメナ属（Gymnaster または Miyamayomena）として分類されていました。しかし、現在はシオン属に含められています。

同じくかつてミヤマヨメナ属とされていたチョウセンシオン（Aster koraiensis）は、大正時代に日本に持ち込まれ栽培されるようになりました。

また、変種のシュンジュギク（var. pygmaea）は、春に開花し、開花期間が長いことから春寿菊の名を持ち、三重県の朝熊ヶ岳や高知県の蛇紋岩地帯に分布しています。

ミヤコワスレ（都忘れ）

ミヤコワスレは、ミヤマヨメナの日本産園芸品種として広く栽培されています。開花時期は5〜6月頃です。

ミヤコワスレの名前は、鎌倉時代に承久の乱で敗れた順徳天皇が、佐渡島に流された際に、この花を見て都への恋しさを慰めたという伝承に由来します。この故事から、花言葉は「別れ」や「しばしの憩い」などと言われています。

栽培の歴史は江戸時代からとされ、文化2年（1805年）には既に記録が残っており、それ以前から栽培されていたと考えられます。花色は紫、桃、白などがありますが、最も好まれるのは紫で、切り花として流通するのも紫色のものに限られています。

ミヤコワスレは、種子には稔性がなく、株分けによってのみ繁殖します。

切り花栽培は、静岡県西遠地方で古くから盛んに行われており、特に草丈を伸ばして開花を促進させる技術が重要でした。近年では、ジベレリンという植物ホルモンが用いられるようになっています。

主な参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本III 合弁花類』,(1981),平凡社
牧野富太郎、『牧野　新日本植物図鑑』、(1961)、図鑑の北隆館
北村四郎・村田源・堀勝、『原色日本植物図鑑・草本編I』、(1957)、保育社
『園芸植物大事典 2』、(1994)、小学館
福島顕子、「ミヤコワスレ」：『朝日 1』：p.100
塚本洋太郎、『原色園芸植物図鑑 〔II〕』、(1964)、保育社

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