ミョウギカラマツ

ミョウギカラマツ（妙義唐松）とは

ミョウギカラマツ（学名：Thalictrum minus var. chionophyllum）は、キンポウゲ科カラマツソウ属に分類される多年草です。基本種であるアキカラマツ（Thalictrum minus）の変種とされています。日本固有の植物であり、その美しい姿と希少性から、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類に指定されています。

特徴

ミョウギカラマツは、植物全体に毛がなく、茎は40cmから100cmほどに成長します。茎はよく枝分かれし、岩壁に垂れ下がるように生育することが多いです。葉は互い違いに生え、根元の葉は開花時期には枯れてなくなります。葉身は2〜4回3出複葉で、小葉は卵形から楕円形をしており、先端は3つに裂けるか、1〜3つの鋸歯があります。葉の表面は青緑色ですが、裏面は雪のように白いのが大きな特徴です。葉脈が突出しており、この白い葉の裏面が学名（chionophyllum）の由来となっています。

花期は7月から8月で、円錐状の花序に多数の花をつけます。花は直径約1cmで、花柄は1.5cmから3cm程度です。萼片は3〜4枚で、白色の楕円形をしており、すぐに散ってしまいます。花弁はなく、多数の雄しべが目立ちます。葯は黄色、花糸は白色で糸状です。果実は痩果です。

分布と生育環境

ミョウギカラマツは、日本固有の変種で、主に群馬県と埼玉県に分布しています。山地の岩場に生え、岩壁から垂れ下がっていることが多いです。また、岩手県や秋田県での分布報告もありますが、生育地は限定されています。

名前の由来

和名のミョウギカラマツは、最初に群馬県の妙義山で発見されたことに由来します。1929年8月に植物学者の久内清孝が妙義山で標本を採集し、同年、植物学者の中井猛之進が「Myôgi-karamatsu」と命名しました。種小名のchionophyllumは、「雪のような葉」を意味し、葉の裏面の白色を表現しています。

前川文夫の原記載文によると、「全草霜ヲ置イタ様ニ白ク、殊ニ葉ノ裏面ニ到テハ全ク乳白色デ中々ニ美シイ姿デアツテ、萬草中ノ一雄タルヲ失ハナイ」とされ、その美しさが強調されています。

種の保全状況

ミョウギカラマツは、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類（CR）に指定されており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いと評価されています。また、各都道府県のレッドデータリストでも、群馬県では絶滅危惧II類(VU)、東京都では絶滅危惧IA類(CR)とされています。生育地の破壊や環境の変化により、個体数が減少していると考えられます。

学名の変遷

ミョウギカラマツは、当初、中井猛之進によって独立種として記載されました。その後、前川文夫によって正式に記載されましたが、1965年に杉本順一によってアキカラマツの変種に分類されました。最終的には1972年にEmuraによって、Thalictrum minus L. var. chionophyllum (Nakai ex F.Maek.) Emura という学名で確定しました。

脚注

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II離弁花類』、1982年、平凡社
加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ（増補改訂新版）』、2015年、山と溪谷社
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
日本のレッドデータ検索システム
前川文夫「新種妙義唐松」、『植物研究雑誌』The Journal of Japanese Botany, Vol.10, No.11, pp.695-696, (1934).

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