ミラージュ2000 (戦闘機)

ダッソー ミラージュ2000：フランスが生んだ多用途戦闘機

ダッソー ミラージュ2000は、フランスの航空機メーカーであるダッソー社が開発した多用途戦闘機です。当初は迎撃戦闘機としての要求に基づいて開発されましたが、その後の改良により、ミラージュシリーズ初のマルチロール機として、世界的に知られる存在となりました。フランス空軍をはじめ、8か国の空軍で採用されています。

概要

ミラージュ2000は、無尾翼デルタ翼という特徴的な形状を持つ単発戦闘機です。フライ・バイ・ワイヤ操縦システムとCCV（Control Configured Vehicle）設計が導入され、従来の無尾翼デルタ翼機の弱点を克服し、高い運動性能と操縦性を実現しています。複合材の使用による軽量化や、ブレンデッドウィングボディの採用による空気抵抗の低減など、当時の最先端技術が投入されています。

開発の経緯

ダッソー社は、ミラージュIIIなどで無尾翼デルタ翼機の開発で実績がありましたが、STOL性能や低空飛行性能、機動性などで二翼式の航空機に劣るという課題がありました。当初はミラージュF1などの二翼機も開発していましたが、1970年代にはミラージュG-4やG-8といった可変翼機の開発が行き詰まりました。

その後、NATOの新型戦闘機導入競争において、アメリカのF-16が革新的な技術で勝利したことを受け、ダッソー社は最新技術を積極的に導入したミラージュIIIの後継機開発に着手しました。これがミラージュ2000の開発につながり、短期間での開発を目指し、既存のエンジンや技術を流用することで、1983年には量産機の納入を開始しました。

設計と特徴

ミラージュ2000は、外見こそミラージュIIIに似ていますが、中身は大きく異なります。無尾翼デルタ翼はそのままに、フライ・バイ・ワイヤやCCV設計を導入することで、操縦性と運動性能を向上させています。また、複合材の使用やブレンデッドウィングボディの採用により、軽量化と空気抵抗の低減を実現しています。

コックピットは、初期型ではアナログ式の計器類が中心でしたが、改良型のミラージュ2000-5ではグラスコックピット化され、多機能ディスプレイやヘルメット装着型照準器が装備されています。

エンジンは、スネクマ製のM53ターボファンエンジンを1基搭載しています。推力重量比は低いものの、シンプルな構造で信頼性が高く、ミラージュ2000の運動性能を支えています。

機体には固定式の空中給油プローブが装備されており、必要に応じて取り外すことも可能です。また、アビオニクスも進化を続け、レーダーや電子戦装備が高度に統合化されています。

派生型

ミラージュ2000には、様々な派生型が存在します。

ミラージュ2000C: 初期量産型
ミラージュ2000B: 複座型
ミラージュ2000N: 核攻撃能力を持つ戦略爆撃機型
ミラージュ2000D: 通常兵器による対地攻撃能力を強化した戦闘爆撃機型
ミラージュ2000-5: 大幅な改良を施したマルチロール型
ミラージュ2000-9: アラブ首長国連邦向けの最新型

運用史

ミラージュ2000は、フランス空軍をはじめ、エジプト、インド、ペルー、ギリシャ、アラブ首長国連邦、台湾、カタールなど、多くの国で採用されています。湾岸戦争やコソボ紛争、リビア内戦など、数々の実戦に参加し、その高い性能を証明してきました。

フランス空軍では、ラファールの導入に伴い、ミラージュ2000は徐々に退役が進んでいます。しかし、輸出された機体は、現在も各国の空軍で主力戦闘機として運用されており、今後も長きにわたって活躍することが期待されています。近年ではウクライナへの供与も決定しました。

スペック

乗員: 1名
全長: 14.4m
翼幅: 9.1m
全高: 5.2m
最大速度: マッハ2.2
エンジン: スネクマ M53-P2 ターボファンエンジン × 1
* 固定武装: DEFA 554 30mm機関砲 × 2

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