ミルクカートン

ミルクカートン：液体飲料用紙製容器の詳細解説

ミルクカートンは、牛乳をはじめとする液体飲料を充填・保管するために用いられる紙製の容器です。一般には牛乳パックや紙パックとも呼ばれています。この記事では、ミルクカートンの歴史から、様々な形状、製造方法、リサイクルに至るまでを詳しく解説します。

歴史

19世紀末以降、従来のガラス瓶に代わるものとして、より軽量で扱いやすい容器の研究が始まりました。初期のミルクカートンには、紙のコーティングにパラフィンが用いられていました。1961年には、スウェーデンのテトラパック社が、効率的な無菌充填包装システムを開発し、その後、各社が追随し、スイスのSIG社による「コンビブロック」システムなどが開発されました。

ミルクカートンの種類

ミルクカートンは、その形状やサイズによって様々な種類があります。代表的なものとして、ゲーブルトップ、テトラクラシック、ブリックタイプがあります。

ゲーブルトップ

ゲーブルトップは、屋根型の形状を持つミルクカートンで、特に牛乳によく使用されます。1915年にアメリカで発明され、1930年代にEx-Cell-O社が「ピュアパック」として商業化に成功しました。当初はホッチキスで封緘されていましたが、現在は熱圧着によって手で開封できるようになっています。日本では1969年に導入され、その安定性と注ぎ口の大きさから、広く普及しています。2001年からは、視覚障害者向けに、パック上部に「切欠き」と呼ばれるくぼみが付けられるようになりました。

テトラ・クラシック

テトラ・クラシックは、テトラパック社が1952年に開発した、正四面体の形状を持つ容器です。同じ容量を充填する際に最も表面積が少なく、ロール給紙で充填加工が可能なため、生産性に優れています。一見正四面体に見えますが、飲み口が自然と上になるように、上部が少し長く設計されています。通常はストローを使用しますが、初期には上部をハサミで切って飲んでいました。

ブリック（レンガ型）タイプ

ブリックパックは、直方体の形状を持つミルクカートンで、積み重ねて輸送できるため、物流に有利です。1962年にPLK社が「blocpak」包装システムを開発、1963年にはテトラパック社がテトラ・ブリック容器を開発しました。1968年には、アルミ箔を内側に貼ったテトラ・ブリック・アセプティック容器が開発され、常温での長期保存が可能になりました。このタイプもロール給紙で充填加工できます。

サイズ

ゲーブルトップ型のミルクカートンは、底辺のサイズによって分類されます。底辺は70mmと57mmの2種類が主流で、高さによって容量が変わります。一般的に70mmのものは1,000mL、500mL、340mL、200mL、57mmのものは250mL、200mLのものが存在します。1,000mLのパックは、寸法上は1,000mLに満たないように見えますが、牛乳を入れた際に内圧で膨らむため、1,000mLが入る設計になっています。

製造方法

カートン用紙

ミルクカートン用紙は、水に弱い紙の両面にポリエチレンをコーティングして耐水性を持たせています。アルミ層を持つ多層構造のものもあります。製紙工場で製造された用紙は、ロール状で印刷工場に運ばれます。

印刷

印刷には、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷が用いられます。かつてはフレキソ印刷が主流でしたが、デザインの複雑化によりグラビア印刷が広まり、現在では多品種小ロット生産に対応できるオフセット印刷が主流になりつつあります。

充填

充填は、専用の充填装置で行われます。テトラ・クラシックやブリックタイプは比較的単純な工程ですが、ゲーブルトップは底部の成型と熱圧着が必要なため、より複雑な工程となっています。

付加機能

ミルクカートンには、以下のような付加機能が加えられる場合があります。

キャップ穴加工：リキャップを取り付けるための加工。
ストロー穴加工：ストローを差し込むための穴加工（貼付方式とダイカット方式）。
ストロー添付：包装されたストローを容器に貼付。
切取線加工：テトラブリックに開封用の切取線を加工。

注ぎ口

ゲーブルトップ型の注ぎ口は、印刷工程で内側にシリコン溶剤を塗布し、熱圧着時に一部が圧着しないようにすることで形成されます。そのため、注ぎ口と反対側から開けようとすると、非常に開けにくい構造になっています。

パックのリサイクル

使用済みの紙パックは、自治体やスーパーマーケット、コンビニなどで回収され、製紙工場でリサイクルされます。リサイクルされた紙パックは、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、キッチンペーパーなどに生まれ変わります。トイレットペーパーについては、水洗便所用のものは水解紙としてリサイクルされます。

主なパックメーカー

日本製紙
アイピーアイ
インターナショナルペーパー
テトラパック
北越パッケージ
大日本印刷
東京製紙

主な印刷機メーカー

コモリ

参考文献

全国牛乳容器環境協議会
全国牛乳パックの再利用を考える連絡会