ミルコ・ペトロヴィチ

ミルコ・ディミトリエ・ペトロヴィチ：激動の時代を生きたモンテネグロの王族

ミルコ・ディミトリエ・ペトロヴィチ（Мирко Димитрије Петровић, 1879年4月17日 - 1918年5月2日）は、モンテネグロ王ニコラ1世と王妃ミレナ・ヴコティッチの次男として生まれました。彼はグラホヴォ＝ゼタ大公の儀礼称号を有し、その生涯は政治的な陰謀と王位継承の可能性に翻弄されました。

セルビア王位継承の夢

1902年、ミルコはセルビア公ミロシュ・オブレノヴィッチの弟の曾孫にあたるナタリヤ・コンスタンティノヴィチと結婚しました。この結婚は、セルビアとモンテネグロの間に特別な協定をもたらしました。もしセルビア王アレクサンダル1世が子供のないまま死去した場合、オブレノヴィッチ家の血を引くナタリヤと結婚したミルコがセルビア王位を継承するというものでした。

しかし、1903年にアレクサンダル1世夫妻がクーデターによって暗殺されるという衝撃的な事件が発生しました。これにより、オブレノヴィッチ家と長年セルビア君主の座を争っていたカラジョルジェヴィチ家が王位を奪取し、ミルコのセルビア王位継承の夢は儚く散りました。この出来事は、ミルコの人生に大きな影を落としたと言えるでしょう。

黒手組への参加と晩年

1911年、ミルコはセルビア人民族主義組織である黒手組に入りました。黒手組は、バルカン半島におけるセルビア民族の統一を目指す秘密結社であり、その活動は第一次世界大戦の引き金の一つとなりました。ミルコが黒手組に参加した背景には、セルビア王位継承の夢が潰えたことへの失望感や、民族主義的な思想があったのかもしれません。

モンテネグロ王国が事実上崩壊した直後の1917年、ミルコは妻ナタリヤと離婚しました。そして翌年の1918年、ウィーンで客死しました。彼の死は、40歳にも満たない早すぎるものでした。ナタリヤの元に引き取られた息子のミハイロは、1921年に伯父の元王太子ダニロからモンテネグロ王家家長の地位を譲られています。

子孫

ミルコは妻ナタリヤとの間に5人の息子をもうけました。

シュチェパツ（1903年 - 1908年）
スタニスラヴ（1905年 - 1908年）
ミハイロ（1908年 - 1986年） - モンテネグロ王家家長
パヴレ（1910年 - 1933年）
* エマヌエル（1912年 - 1928年）

ミルコの息子たちは、それぞれ異なる運命を辿りました。早世した者もいれば、モンテネグロ王家家長として家を支えた者もいました。彼らの人生は、激動の20世紀の歴史と深く結びついています。

ミルコ・ディミトリエ・ペトロヴィチの生涯は、王位継承の夢、政治的陰謀、そして家族との絆が織りなす、波乱に満ちたものでした。彼の人生は、バルカン半島の複雑な歴史を象徴していると言えるでしょう。

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