ミロのヴィーナス

ミロのヴィーナス：美の象徴、その謎と歴史

ミロのヴィーナスは、紀元前2世紀頃の古代ギリシアで制作された彫刻で、女神アプロディーテーの像と考えられています。現在はパリのルーヴル[[美術館]]に所蔵されており、サモトラケのニケと並び、ヘレニズム期を代表する彫刻の一つとして世界中で広く知られています。その作者は、紀元前130年頃に活動していた彫刻家、アンティオキアのアレクサンドロスであるという説が有力ですが、彼の生涯についてはほとんど明らかになっていません。

発見と名称の由来

この像は、1820年4月8日にミロス島で小作農のヨルゴス・ケントロタスによって発見されました。発見当初、像は隠されていましたが、後にトルコ人官吏によって没収され、その後、フランス海軍提督ジュール・デュモン・デュルヴィルがその価値を認め、フランス大使を通してトルコ政府から買い上げました。その後、修復され、ルイ18世に献上され、ルイ18世によってルーヴル[[美術館]]に寄贈されました。

「ミロ」という名前は、発見されたミロス島のロマンス語形に由来し、「ヴィーナス」はアプロディーテーに対応するローマ神ウェヌス（Venus）の英語読みです。英語では、ルーヴル[[美術館]]でのフランス語表記に従い「Venus de Milo」と表記され、一般的には「ヴィーナス・デ・マイロ」に近い発音で呼ばれています。現代ギリシャ語では、「Αφροδίτη της Μήλου」（アフロディーテ・ティス・ミル）と表記されます。

像の特徴と黄金比

ミロのヴィーナスの像は高さ203cmの大理石製で、そのプロポーションは非常に美しいとされています。特に、足元からへそまでと頭頂部までの長さ、へそから首までと頭頂部の比率が、それぞれほぼ1対1.618という黄金比に近い数値を示しています。この黄金比は、自然界にも多く見られる普遍的な美の比率とされ、ミロのヴィーナスの美しさをさらに際立たせています。

発見時には碑文が刻まれた台座がありましたが、ルーヴル[[美術館]]に搬入される際に紛失してしまいました。この台座に作者の情報が記載されていた可能性も指摘されています。

失われた腕の謎

ミロのヴィーナスの最も特徴的な点は、両腕が失われていることです。長年、多くの芸術家や科学者が、この腕の欠けた部分を復元しようと試みてきましたが、確固たる定説は未だに存在しません。俗説として、ヴィーナスが林檎を持っているという話が広く知られています。この林檎は、トロイア戦争でパリスがアテーナーとヘーラーを出し抜き、アプロディーテーに与えた黄金の林檎を指します。また、アドルフ・フルトヴェングラーによる復元像でも、左手に林檎が持たされています。

詩人の清岡卓行は、著書『手の変幻』の中で、ヴィーナスの腕がないからこそ、見る人の想像力が刺激され、全体的な美がより一層際立つと述べています。

日本での展示とその他

ミロのヴィーナスは、ルーヴル[[美術館]]外への展示は非常に稀です。唯一の例外として、1964年4月から6月にかけて、東京都の国立西洋[[美術館]]と京都府の京都市[[美術館]]で特別展示が行われました。この際、輸送中に一部破損が生じ、展示までに急遽修復作業が行われました。

1900年頃にルーヴル[[美術館]]で一度だけ型取りが行われ、現在でもその型を元にレプリカや縮小モデルが制作されています。

参考文献

ロラン・エティエンヌ、フランソワ・エティエンヌ『古代ギリシア発掘史』青柳正規監修、松田廸子訳、創元社〈「知の再発見」双書 46〉、1995年3月。
清岡卓行『手の変幻』講談社〈講談社文芸文庫 現代日本のエッセイ〉、1990年9月。

関連事項

黄金比
ヘレニズム
独裁者 (映画) - チャールズ・チャップリン監督の映画。劇中には、ミロのヴィーナスを模した像が挙手の礼をするシーンがあります。

外部リンク

前田正明『ミロのビーナス』 - コトバンク
『ミロのビーナス』 - コトバンク
アフロディーテ、通称「ミロのヴィーナス」 - ルーヴル[[美術館]]
ルーヴル[[美術館]]のおすすめ作品「ミロのヴィーナス」　メルシーパリ.ネット
ミロのビーナス - ルーブル[[彫刻美術館]]

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