ムクドリモドキ科 (Icteridae)
ムクドリモドキ科(
学名:Icteridae)は、
鳥類の
スズメ目に分類される一群です。この科に属する鳥は総称として「ムクドリモドキ」と呼ばれることがありますが、この
和名は特定の1種(Icterus icterus)の固有の名前としても用いられています。主に
北アメリカ大陸、
南アメリカ大陸、そして
西インド諸島といった新世界に広く分布しており、その生息環境は極めて多様性に富んでいます。
形態
ムクドリモドキ科の鳥は、種によって体サイズに大きな差が見られます。全長は約15センチメートル程度の小型のものから、最大で53センチメートルにも達する大型のものまで存在します。このように、科全体として幅広い形態的なバリエーションを持っています。
生態
この科の
鳥類は、草原や湿地、さらには深い森林など、非常に多様な環境に適応して生活しています。彼らの食性は季節によって変化する傾向があります。繁殖期には、雛や自身のエネルギー需要を満たすために、昆虫を中心とした
動物質の餌を積極的に捕食します。一方、繁殖期以外の季節には、植物の種子や果実、花の蜜といった植物質の食物を主に利用します。また、ムクドリモドキ科の一部の種は、他の種類の鳥の巣に自らの卵を産みつけ、その仮親に子育てを任せるという、托卵という特徴的な繁殖習性を持つことが知られています。
系統と分類
ムクドリモドキ科は、
スズメ目の
鳥類の中でも特に「nine-primaried oscines」と呼ばれるグループに含まれます。このグループは、翼の初列風切羽が9枚であることが特徴です。nine-primaried oscinesの中で、ムクドリモドキ科は
アメリカムシクイ科(Parulidae)や
ホオジロ科(Passerellidae)と共に一つのまとまった系統群を形成していると考えられています。これら3科間の詳細な系統関係についてはまだ不明確な点もありますが、ムクドリモドキ科は
ホオジロ科と比較的近縁である可能性が高いと示唆されています。
ムクドリモドキ科の内部においても、遺伝的な研究に基づくと、大きく分けて5つの系統に分けられることが示唆されていますが、これらの内部系統間の関係性についても、さらなる研究が必要です。
分類の歴史を振り返ると、nine-primaried oscinesは様々な方法で分類されてきました。しかし、ムクドリモドキ類は、多くの伝統的な分類体系において独立した「ムクドリモドキ科」として扱われることが一般的でした。一方で、全てのnine-primaried oscinesを
アトリ科(Fringillidae)に含める見解や、新世界(アメリカ大陸)のnine-primaried oscines全体を
ホオジロ科に含める見解など、異なる分類体系が提唱された時期もありました。これらの体系では、ムクドリモドキ類は
ホオジロ科の亜科(ムクドリモドキ亜科 Icterinae)とされたり、さらに細かく族(ムクドリモドキ族 Icterini)として位置づけられたりすることもありました。しかし、近年の分子系統学的研究からは、独立した科として扱う見解が支持されています。
属と種
現在の
国際鳥類学会議(IOC World Bird List)の分類では、ムクドリモドキ科には27の属と合計108の種が認められています。属の分類は、主に分子系統学的な研究成果に基づいています。この多様な属には、例えばムクドリモドキ属(Icterus)のように鮮やかな色彩を持つ種が多く含まれるグループや、オオツリスドリ属(Psarocolius)やツリスドリ属(Cacicus)のように複雑な巣を作るグループ、あるいはコウウチョウ属(Molothrus)のように托卵を行うことで知られるグループなど、生態的にも形態的にも非常に多様な
鳥類が含まれています。ハゴロモガラス属(Agelaius)やマキバドリ属(Sturnella)といった馴染みのある属もこの科に含まれます。
この科に属する
鳥類のリストは以下の通りです(代表的な一部の属と種を示す)。
オオツリスドリ属 (Psarocolius):クリガシラオオツリスドリ、カンムリオオツリスドリなど
ツリスドリ属 (Cacicus):キゴシツリスドリ、コシアカツリスドリなど
ムクドリモドキ属 (Icterus):ムクドリモドキ(Venezuelan Troupial)、ボルチモアムクドリモドキなど
コウウチョウ属 (Molothrus):コウウチョウ(Brown-headed Cowbird)、オオコウウチョウなど
ハゴロモガラス属 (Agelaius):ハゴロモガラス(Red-winged Blackbird)、サンショクハゴロモガラスなど
マキバドリ属 (Sturnella):ヒガシマキバドリ、ニシマキバドリなど
(リストは提供された情報から一部抜粋・再構成しています。)
参考文献
本記事は、学術的な分類情報や生態データに基づき作成されています。