ムザッファル朝

ムザッファル朝：14世紀イランを彩ったアラブ系王朝の興亡

ムザッファル朝（1314年 - 1393年）は、14世紀にイラン中部に存在したアラブ系の王朝です。その支配領域は、ヤズド、ケルマーン、シーラーズといった都市を含む地域に及びました。創始者ムバーリズッディーン・ムハンマドから始まるその歴史は、周辺勢力との複雑な関係と、内部抗争に彩られています。

ムザッファル朝の勃興

ムザッファル家の祖先は、イスラム教徒による征服の際にホラーサーン地方に移住したアラブ人でした。モンゴル帝国の侵攻後、一家はヤズドに移り住み、地元の政権に仕えます。シャラーフッディーン・ムザッファルは、イル[[ハン朝]]のアルグンに臣従し、メイボドの代官に任命されました。その子ムバーリズッディーン・ムハンマドは、イル[[ハン朝]]の衰退に乗じて勢力を拡大。チョバン朝と同盟し、ケルマーンの支配権を獲得します。

支配領域の拡大と独立

ムバーリズッディーンは、ヤズドとケルマーンを巡り、インジュー朝と激しい戦いを繰り広げます。彼はインジュー朝の攻撃を退け、貨幣から周辺勢力の名前を削除することで、独立の意思を明確にしました。1353年にはシーラーズを征服し、エスファハーン遠征ではシャバーンカーラ国を滅ぼします。また、カイロのアッバース家への忠誠を誓い、スルターンを自称しました。

王朝の内紛と衰退

ムバーリズッディーンの治世は、1358年に息子のシャー・シュジャーによって終わりを迎えます。シャー・シュジャーはシーラーズを拠点とし、兄弟や甥との間で権力闘争を繰り広げました。シャー・シュジャーの死後、ムザッファル朝の領土は分裂し、王権は不安定化します。1387年、ティムール朝の攻撃を受け、ザイヌル・アービディーンは抵抗を試みますが、エスファハーンは住民の虐殺という悲劇に見舞われました。

ティムール朝の侵攻と滅亡

ティムールが一時的にイランから撤退した後、シャー・マンスールはエスファハーンとシーラーズを奪還しますが、1392年に再びティムール朝の侵攻を受けます。シャー・マンスールは抗戦の末に戦死し、ムザッファル家の王族は処刑されました。ザイヌル・アービディーンとその兄弟は助命され、サマルカンドで余生を送りました。これにより、ムザッファル朝は完全に滅亡しました。

文化的な貢献

ムザッファル朝の時代、シーラーズでは文化が発展しました。シャー・シュジャーは学者を保護し、ハーフェズなどの詩人が活躍しました。また、建築物の外壁をタイルで装飾する技法が確立され、ヤズドやケルマーンのモスクが美しいタイルで彩られました。これらのタイル装飾は、後のイラン建築に大きな影響を与えました。

ムザッファル朝は短期間で滅亡しましたが、イランの歴史と文化に確かな足跡を残しました。その興亡の物語は、中世イランの政治情勢と文化の多様性を物語る上で、重要な位置を占めています。

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