ヤズド

ヤズドの概要

ヤズド（ペルシア語：یزد）は、イラン中央部に位置するヤズド州の州都です。この都市は、古くからの歴史を持ち、特にゾロアスター教文化の中心地として知られています。ヤズドはエスファハーンの南東約280kmの地点にあり、2005年のデータでは人口433,836人、2006年には505,037人を記録しました。砂漠環境への適応を築いてきたヤズドの建築様式は、世代を超えて独自のスタイルを持っています。また、高品質な手工業品、特に絹織物や菓子の生産で名を馳せています。

地理と気候

ヤズドは、キャヴィール砂漠とルート砂漠が交わる地点に位置し、シール・クーフ山脈とハラーネグ山地の間に広がるオアシス都市です。この特異な地理的位置から、「キャヴィールの橋」とも称されています。都市の標高は海抜1203mで、面積は約16,000 km²になります。ヤズド州は10の郡（シャフレスターン）で構成され、それぞれの郡には市（シャフル）と複数の村があります。気候は非常に乾燥しており、夏は40℃を超え、冬には-20℃に達することもあります。

歴史

ヤズドの歴史は3000年以上にもさかのぼり、古代メディア王国時代には「ヤスティス」と呼ばれていました。現在の名前はサーサーン朝のヤズデギルド1世から派生したものと考えられています。サーサーン朝時代には、ヤズドはゾロアスター教の重要な中心地となりました。イスラームの征服後も多くのゾロアスター教徒がこの地に避難し、長い間、イスラームは主宗教とはなりませんでした。

この都市は砂漠の中に位置しているため、攻撃されにくく、モンゴル帝国の侵攻の際には避難地としても機能しました。14世紀には短期間ながらムザッファル朝の首都となり、重要な建築物であるヤズド集会モスクなどが建設されました。18世紀以降はガージャール朝の影響を受けることとなり、バフティヤーリー族の支配を受けました。

建築と文化

ヤズドは、砂漠型の伝統的なペルシア建築の優れた例が点在しています。特に、ヤズドのカナート網は世界最大で、カナート職人の技術は非常に高く評価されています。夏の暑さに対応するため、大きなバードギール（風通しを利用した冷却装置）や地下室が設けられ、近隣山地の氷を蓄えるヤフチャール（水を冷やすための施設）も見られます。

ゾロアスター教の文化的な遺産も重要で、ヤズド郊外には「沈黙の塔」と呼ばれる死者の塔、都市内にはアーテシュガーフ（拝火神殿）が存在します。この神殿の火は西暦470年から絶えず燃え続けており、現在も約2万から4万人のゾロアスター教徒がこの地に住んでいます。

世界遺産

ヤズドは、そのカナート群が2016年に「ペルシア式カナート」として世界遺産に登録され、翌年には都市の歴史地区が世界遺産としても認められました。この認定は、特定の文化的伝統や人と環境の関わりを示す傑出した例として評価されています。

今日のヤズド

現在、ヤズドは高品質な絹織物や絨毯の生産地として知られ、イランの繊維工業の中心地の一つとなっています。陶器や建築資材、独自の菓子や宝飾品など多様な産業も展開されています。情報技術産業も成長しており、主にケーブルやコネクタの部品が製造されています。ヤズドの菓子は観光資源にもなっており、バグラバやゴターブなどが特に人気です。

2000年にはヤズド水博物館が開館し、水に関する歴史や技術が展示されています。

著名な出身者

ヤズドは多くの著名人を輩出しており、モハンマドレザー・アーレフ（イラン副大統領）、モハンマドアリー・ジャアファリー（イスラム革命防衛隊司令官）、ミールザー・モハンマド・ファッロヒー・ヤズディー（詩人・政治家）などがいます。特にヤズド大学は1988年に設立され、ペルシア芸術や建築を専門とした学部が存在します。

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