ムシェズィプ・マルドゥク

ムシェズィプ・マルドゥクは、紀元前7世紀に短期間ながらもバビロニア王として君臨した人物です。彼の治世は、アッシリア帝国との激しい抗争によって彩られました。

ムシェズィプ・マルドゥクはカルデア人の王子として生まれました。前王ネルガル・ウシェズィプがアッシリアとの戦いで敗死すると、その地位を継承し、紀元前692年にバビロニア王に即位します。彼はアッシリアの支配に抵抗し、独立を掲げて戦いを挑みました。

ムシェズィプ・マルドゥクの反アッシリア闘争において重要な役割を果たしたのが、エラム王フンバン・ニメナからの支援でした。エラムはバビロニアと地政学的に近接し、アッシリアに対抗する潜在的な同盟国でした。フンバン・ニメナからの軍事・外交的な援助は、ムシェズィプ・マルドゥクの戦いを大きく後押ししたと考えられます。さらに、彼は周辺諸国からも支持を得て、アッシリアに対抗する広範な連合を形成することに成功しました。

紀元前691年、ハルールの戦いで、ムシェズィプ・マルドゥク率いるバビロニア軍はセンナケリブ率いるアッシリア軍と激突しました。この戦いで、ムシェズィプ・マルドゥクはアッシリア軍を破り、一時的にバビロニアからアッシリア勢力を駆逐することに成功しました。この勝利は、アッシリア帝国の圧倒的な軍事力に対する、バビロニアの抵抗の象徴となりました。

しかし、この勝利は長くは続きませんでした。センナケリブは敗北を挽回すべく、大規模な軍事遠征を準備し、紀元前689年に再びバビロンへと侵攻してきました。バビロンはアッシリア軍によって包囲され、9ヶ月にも及ぶ激しい包囲戦が繰り広げられました。

包囲戦はアッシリアの圧倒的な優勢で進み、最終的にバビロンは陥落しました。この戦いの結果、バビロン市はアッシリア軍によって徹底的に破壊され、マルドゥク神像もアッシリアへと持ち去られました。この出来事はバビロニアの人々にとって大きな精神的打撃となり、アッシリアの支配の重さを改めて認識させました。

ムシェズィプ・マルドゥクの最期については明確な記録が残されていません。しかし、バビロン陥落の際に戦死した、あるいは捕縛後に処刑されたと考えられています。彼の短い治世は、アッシリアとバビロニアの勢力争いの激しさと、その中で生きた人々の苦悩を物語る、歴史における重要な一ページとなっています。ムシェズィプ・マルドゥクの物語は、古代近東における政治的・軍事的な緊張と、権力闘争の残酷さを私たちに伝えています。

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