ムハンマド・ムルシー

ムハンマド・ムルシー（Mohammed Mursi）

ムハンマド・ムルシー（1951年8月20日 - 2019年6月17日）は、エジプトの政治家であり、エジプト初の民主的に選ばれた大統領です。彼は工学博士の学位を持ち、1975年にカイロ大学を卒業後、1982年に南カリフォルニア大学で博士号を取得しました。ムルシーは、自由と公正党の党首として、人民議会議員を務めるなど、エジプトの政治シーンで活躍しました。

政治経歴と大統領選挙

エジプト革命の後、ムルシーは2012年の大統領選挙に出馬し、自由と公正党の候補として選挙戦を戦いました。当初、同胞団の副団長であるハイラト・シャーテルを候補として擁立する予定でしたが、彼が失格となったため、ムルシーが候補に立つことが決まりました。第一回投票では、彼は24.78%の得票率で1位になり、決選投票に進出。決選投票では51.73%を獲得し、大統領に就任しました。彼の選出は、アラブの春に続く新たな政治の流れを象徴するものでした。

政権の特徴と課題

大統領として、ムルシーは政教分離を求める世俗派からの反発を受けながらも、イスラム主義に基づく政策を進めました。その結果、彼は多くの支持を集める一方で、激しい反発も招きました。特に、彼の政権後半における新憲法制定の試みは大規模な抗議運動を引き起こし、彼の政権は次第に不安定になっていきました。

2013年、国防大臣アブドルファッターフ・アッ＝シーシーが主導したクーデターにより、彼は解任され、その後拘束されました。クーデター以降、ムルシーは死刑判決を受けるも、2016年にはその判決が覆され、20年の禁錮刑が言い渡されました。2019年、彼は法廷内で倒れ、その後亡くなりました。

経済と外交

ムルシー政権は、外貨不足や経済の停滞といった厳しい問題に直面しました。2000億ドルの直接投資を受け入れるとの公約が掲げられましたが、就任から9ヵ月で実現した投資はわずか14億ドルにとどまりました。燃料の安定供給を果たせず、国民生活に影響を及ぼす事態にも進展しました。経済は困難な状況にあり、国際[[通貨基金]]からの援助も得られないまま、物価の急騰や失業率の上昇が続いていきました。

外交面では、ムルシーはパレスチナ人の権利を支持し、シリア問題についても積極的に発言していました。特に、彼は国連総会での演説を通じて国際社会にメッセージを送りました。サウジアラビアや中国など、外遊先での会談を通じて資金援助を引き出すことにも努めましたが、内政の不安定さから外交力を十分に発揮できなかったという評価もあります。

家族と晩年

ムルシーは妻ナグラーとの間に5人の子女をもうけ、彼の長男は医師として活躍しています。しかし、彼自身の政治的キャリアは波乱に満ち、死後もエジプト政治における重要な出来事として語り継がれています。彼の政権は新たな時代の幕開けを告げるものであり、エジプトのみならず中東全体に影響を与えるものとなりました。

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